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第6回ファイナンス勉強会「為替リスク・金利リスクと財務管理:Q&A」

日本の企業は貿易や海外のM&Aなどにより、大量の外貨建て資産や外貨建て負債を保有しています。たとえば、外貨建て売上債券は、将来、外貨収入をもたらし、外貨での負債調達は外貨支出をもたらします。しかし、外貨には為替変動が伴うので、外貨収入や外貨支出の円貨額は為替相場しだいというリスクを伴うことになります。これが為替リスクです。為替リスク対策には為替マリー、ネッティングおよびデリバティブズの利用などがあります。しかし、もっとも、シンプルな為替リスク対策は外貨で取引を行わないことです。しかし、相手があることですからこれは容易なことではありません。経済産業研究所の実態調査によると、わが国企業の実態は、最近、ドル建てが中心で、これにアジアでは現地通貨建ての取引が殖えており、むしろ円建ての取引は減少傾向にあります。この背後にはグローバルなSCMがあると考えられます。

他方、金利変動は、社債などの債務の価値を変化させ、株主と債務者との間の価値の移転をもたらします。つまり、市場金利の上昇は債務者から株主への価値移転をもたらし、逆に金利下落は株主から債務者への価値移転をもたらします。これを金利リスクと呼びます。これを回避するために、社債においては、株主、債務者それぞれがオプションを設定します。それが任意償還条項付社債や買取請求権付社債です。

♦Q&Aおよびディスカッション♦ (田中さん、松浦さんの記録を元に若杉が編集)

Q01:インボイス通貨の実情はどのようなものか。栗田さん、いかがですか。

A01-1:私のところは95%位が海外売り上げの会社ですが、講義のとおり決済通貨は半分くらいがドル、4割が円、残りがユーロ。昔みたいに何でもドルということはなくなった(栗田)。

A01-2:私が役員をしている会社では、中国で生産しているが、元、円の両方でやりとりしている。売るときはドルである。(大林)

Q02:日本企業はPTM行動を採り為替リスクを負担する傾向にあるとの説明ですが、日本の競争相手国、例えば韓国の企業も同様の行動を採っているのか。

A 02-1:他国に関しては調査してない。

A02-2:一般論として取引先の現地通貨の国際化が進み、為替予約が可能となると、競争力を高めるため、取引先の要望に応え現地通貨建ての契約をする傾向にある。競争相手も同様と理解している。結局は現地通貨の為替予約の可能性如何がPTM行動を採用するか否かに影響すると思う。(松浦)

Q03:7年前に為替予約をしていなかったため、為替損失に係わる報道が多かったが、最近の傾向は如何か?また、中小企業は為替リスクの管理をどのようにしているか?

A03:最近の動向に関する調査はしていませんが、中小企業の為替リスク管理の一つの方法として商社が活用されているとのことである。

コメント:今日のレクチャーでは触れられていませんが、私の商社での経験から、為替リスク管理を考える時、同時に信用リスクと一体して考える必要性を感じています。例えば、外貨建て債権に対し全額為替予約した場合、債権回収が期日に全額回収できないとオバーヘッジになるため、債権回収率を的確に見積もって対処することが重要になる。また、ネッテング契約をしてもスクエア・ポジションでないとネット・エクスポジユアーが発生するため、取引先(カウンターパーティー)の信用度に応じてネット・エクスポージャーに限度額を設定して管理することが重要になると思う。(松浦)

Q04:日本全体として、銀行を通じてのヘッジは変化しているのか。

A04:とくに変化はないと思う。

Q05:マイナス金利の時代に国債が買われる理由は何か。

A05-1:日銀は貨幣供給のため、発行済みの国債を発行価格より高い価格で買い取ってくれる。それを見越して、銀行や機関投資家はマイナス金利の国債を買う。

A05-2:日銀は直接新規発行の国債を購入することを法律が禁じているため、国債を購入した金融機関から利益が出る価格で購入し続けているため、安心して金融機関は国債を購入しているため、国債が買われる理由となっている。(武)

A05-3:地方銀行の場合はマーケットオペレーションの方針次第である。長期金利でもマイナス金利を適用しようとしたらマーケットがガタガタになってしまった。(中村)

Q06:この低金利時代に大量に社債が発行されているが、発行会社の狙いは何か。

A06-1:低金利の社債の発行で調達した資金で既存の高金利の社債の償還等を行うことが考えられる。

A06-2:増資による資金調達は株式の希薄化とROEの低下を招くので、社債による長期資金の調達が活発化していると思われる。

Q07:日本円はアベノミック政策の中、1ドル84円から107円に円安となり、日経平均株価が円安に連動して上昇しているが、日本企業の収益構造が変化し、円安が直ちに企業収益を押し上げる効果は以前と比較し少なくなっていると思われる中、この動きを如何に理解すべきですか。(武)

A07-1:日経225の指標に採用されている銘柄には、輸出主導の大会社が多いことが影響していると思う。

A07-2:円安効果には、期中の収益効果のみならず、期末の連結決算のバランスシート効果もあるる。

Q08:円は日本の経済構造から長く「危機に弱い通貨」と言われてきたが、最近は「危機に強い通貨」の様相を示しているので、金融に精通している友人にその訳を聞いたら、「日本の金融機関が収益の機会を求めて外債等を購入しているが、為替予約をしていないため、危機が発生すると慌てて為替予約をするため円安が発生していないだけで、海外の投資家が危機時に円を購入した結果ではない」と説明していましたが、これに対し金融機関の方々の意見は如何ですが。(松浦)

A08:肯定的な意見が多かった。

Q09:商社は金融収益を求めて積極的に活動しているように見受けられるが実態はどうか

A09-1:同じく商社といっても一律には言えないが、一般的には金融主導ではなく実需に対応した金融となっている。事業投資を活発に行っているが、その際の長期資金の調達や為替リスク対策を財務部が中心となって実施している。またグループ子会社が各々資金調達や為替・金利リスクの管理を行うのではなく、財務部が海外の主要拠点に金融子会社を設置しグループ子会社は金融子会社からの資金調達を行い、為替・金利のリスク管理は金融子会社が本店並びに他の金融子会社と連携しながら実施している。(松浦)

A09-2:まさに今日とりあげたネッティングを実践しているのだと思う。

Q10:デュレーションの日本語は?

A10:期間。債券の場合は平均残存期間。平均回収期間と説明する人もいる。

Q11:プッタブル・ボンド(買取請求権付社債)は実際には発行されていないのではないか。

A11-1:80年代にスイスで発行された。(栗田)/ソフトバンクも発行した(渡辺)

 

以上

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