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第8回コーポレートガバナンス勉強会「監査委員会と内部監査:Q&A」

まずニューヨーク証券取引所の上場規則によって米国の監査委員会のベスト・プラクティスをみていく。

NYSEの上場規則は、監査委員会の標準的職務として次のような事項を求めている。

1.監査委員会憲章Charter)を定める

2.監査委員会は、取締役会が、最低限、次の事項に関して決定や確認ができるように、取締役会に対して情報提供を行う

①財務諸表等の正規性 ②法律および規則に関する会社のコンプライアンスの状況 ③内部監査人・外部監査人の資質及び独立性に関する検証結果 ④内部監査人および会計監査人の職務遂行状況 ⑤株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任などの議案

3.SEC規則に基づいて監査委員会報告書を作成し、年次株主報告の一部として株主総会通知書に記載する。

4.上場会社は内部監査部門を持たなければならない

監査委員会の職務は、財務諸表のレビューと並んで内部監査および外部監査の独立性のチェックである。外部監査は監査法人によって行われるものなので、ここでは企業内の機能である内部監査を取り上げる。

内部監査の本質は、日本内部監査協会の内部監査基準が定義するように、組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から公正かつ独立の立場で、経営諸活動の遂行状況を検討・評価し、これに基づいて意見(asurance)を述べ、助言・勧告を行う監査業務、および特定の経営諸活動の支援を行うコンサルティング業務である。
これらの業務の中で、とくにリスク・マネジメントコントロールおよびガバナンス・プロセスの有効性について検討・評価し、この結果としての意見を述べ、その改善のための助言・勧告を行い、または支援を行うことが重視される。http://www.iiajapan.com/guide/kijyun/

内部監査がその役割を果たすためには、内部監査人は独立でなければならない。内部監査部門はマネジメントシステムの一部であり、CEOの管轄下にあり内部監査人を任命するのはCEOである。その際、CEOは、内部監査人が経営諸活動の遂行状況の検討・評価に基づき、企業内のすべての人に対して、独立、客観的建設的な意見を述べることを期待して任命すべきである。すべての人には当然CEOも含まれる。そのためには、内部監査人にはそれなりのスキルとともに独立性を誇りとする資質・姿勢が必要である。

ところで内部監査は内部統制の一機能である。著名なCOSOレポートによれば、内部統制の使命は、企業目的を実現するために、事業遂行において①業務の有効性および効率性 ②財務報告の信頼性 ③事業活動にかかわる法令の遵守 ④資産の保全が確保することであり、その要素は、①統制環境  ②リスクの評価と対応 ③統制活動 ④情報の伝達 ⑤モニタリングおよび⑥ITへの対応である。⑤モニタリングがまさに内部監査である。

Q&Aおよびディスカッション(松浦さん・三井さん、議論の記録、ありがとうございました)

はじめに

内部監査の詳細は、法律やNYSEの上場基準で定められているわけではありません。米国においては、IIA(The Institute of Internal Auditors)が、監査委員会に関して “Model Audit Committee Charter”を示し、監査委員会の標準化を目指しています。また、内部監査については同じくIIAより“International Standards for the Professional Practice of Internal Auditing (Standards)”が発表され、内部監査実務の指針が示されています。今回の勉強会の内容はほぼこれらに即したものですので、「こうでなければならない」という事項をまとめたものではないことをしっかりと念頭において、勉強会の資料やQ&Aを読んで下さい。企業は基準を参考にしつつ、自社の状況を冷静に判断し、自社における内部監査のあり方を構築していかなければなりません。

Q01:取締役会に対する内部監査報告は、なぜCAEではなくCEOがするのか。CEOも内部監査の対象であるのにおかしいではないか。その意味では、監査委員会が報告すべきではないか。(山口公明、吉野ほか)

A01:CEOがCAEの任命者であり、CEOが内部監査全体の責任者だからである。実質的にはCAEが報告や説明を行うことになるであろう。CEOも内部監査の対象だからこそ、内部監査人には独立性が求められるのであり、監査委員会が内部監査人の独立性を厳しくチェックするのである。監査委員会職責は内部監査人の独立性のチェックであり、そのことに関しては監査委員会が取締役会に報告する。しかし、内部監査自体を行うわけではないので、内部監査に関する報告は執行側が行うべきである。(若杉) 

コメント01:当社では有能な職員が限定期限付きで内部監査人に任命され、内部監査報告書は経営トップに提出され、取締役会が報告書に基づくレビューを厳格に行うという体制が30年以前から励行されている。

    • 内部統制に関して大変良い会社だと思います。(若杉)

Q02:監査委員会憲章の中の報道発表等の財務情報についての意見交換やリスク評価等に関するポリシーについての話し合い等は、監査委員会内での意見交換や話し合いと理解して宜しでしょうか。(山口公明)

A02:その通りです。只意見交換等について議事録を作成していると思います。義務履行を実証するために文書化することの重要性は全てに当てはまることです。(若杉)

Q03:Job descriptionはWorker levelに適用されるが、Manager level以上は昇格するにつれて業務範囲が広がるという点では日本と変わらないのではないか。(山口)

A03Job Descriptionが、上級の管理者になるほど曖昧な点が出てくることはあると思うが、上級の管理者であっても最低限なすべきことは明確に決まっているのではないか。そうでなければ責任体制が曖昧になってしまう。指名に関して、社外取締役を依頼するときに担当を説明してお願いすると説明したことや取締役のスキルマトリックスのことを思い出して欲しい。(若杉)

コメント02欧米はWhite colorとBlue colorと明確に区分されている。日本ではこの区分が無く、配転や昇格等でJob descriptionが変わって行く。また、日本では実質解雇制度が無いので、Jobが無くなったから解雇に繋がるわけでは無く、Job description の意味合いが欧米と日本では異なると思う。(山内)

Q04:日本ではJob description がないことで内部統制に支障をきたすことは無いのですか。(藤本)

A04職務権限規程に従って、意思決定が行われていることから内部統制に支障をきたすことは無いと思う。(山口隆太)

注)Job descriptionに関しては次のサイトが面白い。(若杉)

https://ameblo.jp/ambitionistana1983/entry-12216130759.html

Q05:日本では、経営者の職務執行の監査は監査役が行い、管理職並びに従業員の職務執行の監査は内部監査部が行うようになっているが、米国では内部監査部が経営者の職務執行も監査対象としているのは、米国の監査委員会が経営者の職務執行の監査を含めて自ら監査をせず、内部監査部並びに外部会計監査人の報告に依拠して監査することと関係していますか。(松浦)

    A05:その通りだと思う。(若杉)

Q06:報告に依拠した監査を行う場合、或る程度会社の実態とリスクの存在を理解した上で、適確な質問を報告者にすることで、報告者から適確な回答を引き出すことが肝要で、そのため日本の監査役は往査・実査の立会い等を行っているが、会社の状態に精通していない非常勤・社外監査委員が報告者から適確な情報を収集できるのでしょうか。また、上司であり任命権者でもあるCEOも内部監査部の監査対象とするのは理論的には理解できても、実体論として監査を有効にすることは容易ではないと思料します。(松浦)

A06:こんな方法で監査を行ってこんな結果が得られましたと報告されても容易に騙される可能性がある。したがって、報告される側は監査人が信頼の置ける人間であるかによって判断するしかない。日本の社外監査役であれば、色々な角度から質問することによってそれを判断しようとする。米国では、監査人の「独立性」の判断という形で行っている。忠誠心という言葉を使うなら、米国の場合、監査人の独立性に対する忠誠心に期待して、「独立性」を重視するのである。独立についての概念が希薄な日本人の習性で米国を見てはいけないと思う。(若杉)

A06-1:さらに言えば、株主の存在の違いが大きいと思われる。即ち日本では株主が株主権を行使することが実質的に少ないが、欧米では株主の経営者に対する影響力が大きいので、経営者が、ガバナンス・内部統制に対して常に配慮を払っている点が日本と異なると思われる。(武)

 Q07:内部監査憲章は会社によって違うのか。

A07:会社によって事業の進め方や遂行の仕方が異なるので、内部監査基準は当然会社によって異なる。NYSEの監査委員会に関する上場規則も「最低限このことだけは盛り込むよう」にといっているだけである。IIAの内部監査基準も、あくまでもひな形である。(若杉)

 コメント03:日立製作所では、4年に一度、優秀な人材を選んで大がかりな内部監査を行ってきた。

 コメント04:顧問や相談役が経営者に口出しするので経営をおかしくしている。本来は、経営をよくするためのガバナンス的な役割が期待されている制度だと思うが、実際には逆である。

 コメント05:Job descriptionが、従業員ひとりひとりが何をすべきかを詳細に記述しているのであるから、内部監査はその通りやっているかどうかを見れば良い。日本ではjob descriptionのビジネス慣行がないので、内部監査が窓際的な存在にされているのではないか。

若杉

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