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第11回 ファイナンス勉強会「行動ファイナンス:複雑性回避のヒューリスティクス」

 人は常に何らかの行動をとらなければならない事態、状況あるいは問題などに直面している。この問題を解決するためには、どのような行動をとりうるか、行動の結果はどのようなものであるか等を考えなければならない。そこには、意識、知覚、推論、判断など頭脳を使った「知」の獲得過程がある。そのプロセスのことを認知(cognition)という。

 その時、脳内では、①さまざまな情報を集め何が問題であるかを整理し(problem finding and definition)、②さらにその問題を解決するために情報を収集し、③行動を起こすための代替案を作成し、④その結果を比較し(problem solving)、⑤最終的に意思決定を行い(decision making)、⑥行動に移す(action)という作業が行われる。このような情報処理を行う脳の活動が認知である。認知には、エネルギーを費消するし時間もかかる。それは脳にとって大きな負担である。そこで脳は、情報処理活動を簡便化・迅速化する工夫をする。つまり、左脳の働きにより、能率的かつ短絡的な方法で問題を解決しようとする。具体的には、簡便化、単純化などを用いたり経験則に頼ったりしようとする。これらの方法はヒューリスティクス(heuristics)と総称される。これらは、前回も述べたように人類(ホモサピエンス)の長い進化の過程で形成されてきたものである。

ヒューリスティクスにより問題解決のための労力や時間を節約することが出来るが、いつでも正しい結論に到達するわけではない。ヒューリスティクスに対して論理的プロセスを経て問題解決に至る一連の手順のことをアルゴリズム(algorithm)という。人の認知資源-脳の能力-は限られているので、簡便で短い時間で結論に到達することが出来るヒューリスティクスは、日常生活の仲で頻繁に用いられる。しかし、そのヒューリスティクスが適切でない場合に用いられると判断に偏りが生ずることも多い。このような判断の歪みを認知バイアス(cognitive bias)という。

 ヒューリスティクスにはさまざまなものがあるが、複雑性を減少させるタイプのものと、時間節約をもたらすタイプのものとに大別することが出来る。前者は、上述の➀から⑥までのプロセスを単純化させるもので複雑性回避のヒューリスティクスと呼ぶことが出来る。他方、われわれの行動はリスクをともなうので、行動の結果の確率を推定する必要がある。しかし、確率の判断は難しいし時間もかかる。そこで人の脳は確率を直観的に判断し時間を節約しようとする。このタイプの簡便法を時間節約のヒューリスティクスと類型化することが出来る。

 複雑性回避のヒューリスティクスには、さらに単純化、メンタルアカウンティングおよび利用可能性という三つのタイプがある。なお、利用可能性ヒューリスティクスも確率の推定の際に発現するヒューリスティクスである。それぞれのタイプにはさらにバリエーションがある。今回の勉強会では複雑性回避のヒューリスティクスのさまざまなパターンをくわしく見ていく。

以上

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