JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2020 CG研究会:第1回「コーポレートガバナンスの意義と役割:Q&A」

はじめに 2020年度のコーポレートガバナンス研究会(略称CG研究会)は新型コロナウイルスへの感染が世界的に拡大する中のスタートになり、レクチャーは録画配信そして議論はZoomセッションという形をとらざるを得なかった。

  われわれ人類「ホモサピエンス」は、地球に誕生して以来、人々が集まり社会生活を行うことにより種として発展してきた。現代においては、地球上の各地に散らばった人類は、それぞれ国を形成し経済や政治のシステムを作り生活している。わが国はじめ民主主義を基本とする資本主義国では企業形態の中心は株式会社であり、株式会社が経済を支えていると言っても過言ではない。400年の歴史を有する株式会社は資本主義に適合した優れた仕組みであるが、現在のように複雑な環境においては株式会社制度の運営は決して容易ではない。株式会社が人々の生活に貢献するためには、時代によって変質する資本主義の現状にあった株式会社制度のあり方を工夫していくことが不可欠である。その根本問題がコーポレートガバナンスである。株式会社を経営するのは経営者であるので、経営者の経営を社会が必要とする経営に誘導する仕組みが必要である。それが取締役会のガバナンスである。株式会社制度にはそれが内包されているが時間の経過とともに形骸化してしまった。20世紀から21世紀にかけて世界経済が大きく変容する中で、株式会社は業績低迷や経営者の不祥事などの問題を頻発させてきた。各国はコーポレートガバナンスのあり方に根本問題があると認識しコーポレートガバナンス改革を進めている。このような認識の下、第1回のコーポレートガバナンス研究会においては次のようなトピクスを取り上げた。

I. コーポレートガバナンス改革の背景
II. コーポレートガバナンスとは?
III. 現代社会における企業の使命
IV. 企業とステークホルダー
V. ガバナンスの対象:現代の企業経営
VI. むすびに

(若杉敬明)

Zoomセッションに向けて参加者に質問等を募集したところ次のような感想や意見や質問が寄せられた。30分程度と時間に制約のあるこのセッションを効率的に進めるためにそれらを以下に紹介するので、予めそれらを読んでおいてください。先着順に掲載します。最初は、Zoom会議の招集者をお願いしている三井さんからです。

1.三井千絵さん

今回の授業は、企業の目的は株主価値の最大化だというトーンから社会にとっていいものである、というトーンが強かったように思いました。

他の人がやりたくない事業(議論はありますが、炭坑や工事、危険物が含まれる工場をもつ事業)にもやろうという人がいるのは、その事業を行う人が少なければ受給の関係で高収益が望めると思うからかもしれません。

会社の中でもやりたくない仕事に社員を割当モチベーションを持たせる為には、収入などで差をつけるのが一つのやり方だと思います。

むしろ見えないベネフィットより、そのほうがフェアだという気もします。なので企業が収益を求めることが前提で、社会にいいこと、というのもそれを気をつけた方が結果的に長期の収益が良いからだという理由からそう考えるべきだと思うのですが、どうでしょうか。。。

<若杉> インセンティブの問題ですね。貧しい時代には一生懸命に働かないと食べていけませんから特別なインセンティブは必要ありませんでした。「働けば収入が得られる」そのことがインセンティブでした。しかし、豊かな時代になると大して働かなくても食べていけます。そうなると、良い仕事をした人には高い報酬が与えられる、あるいは昇進でプライドを満足させるなどのインセンティブが必要になります。また人がやりたがらない仕事をする人には賃金を高くするなどのインセンティブが必要になります。インセンティブを与えることにより費用が余分にかかっても、一生懸命に働いてくれることによって生産性が上がれば、むしろ利益が増え、株主価値が増加します。株主も従業員もハッピーになるwin-winの関係です。

2.松浦洋さん

3月8日の録画によるご講義ありがとうございました。コーポレートガバナンス論の発展経緯や理論的根拠が、良く理解できました。

一方、コーポレートガバナンスの適用に当たっては、国においてはその国情に適合するコーポレートガバナンス体制の採用を、企業においては、企業文化・企業規模・経営資源等に適合したコーポレートガバナンスの運用に留意していくことが重要になるのではないかと感じましたので、下記します。

1.日米の国情の違いがコーポレートガバナンス論に与える影響について

  良質な経営は誰の為かという命題について、米国は株主の為、日本はステークホルダーの為、(特に社会の公器性が高い上場会社に於いては)と分かれるのではないかと思いました。  

  この相違は、日米の国情の相違が底流にあるのではないか? 即ち、歴史・言語・文化・宗教・国土(島国・広さ・天然資源)・国民性(単一民族と多民族、先憂後楽と先楽後憂)・価値観(協調性と自己主張)等を含めて国情と総称すれば、両国は市場経済を共有する先進国ではあるも、国情は非常に異なり、政府の対応についても、日本では企業にベースアップを求め、また新型コロナウイルス危機に対し企業に雇用維持を求め、米国では企業の経営に口を出さず、毎週600万人を超える失業保険申請が出る等全く異なる対応を各々の政府が行っている。このような状況の中、コーポレートガバナンス論も一律では無く日本の国情に適合したコーポレートガバナンスの整備・運用を、また同じ日本企業においても、各々の企業文化・企業規模・経営資源等に適合したコーポレートガバナンスの整備・運用を行うことが重要ではないか、コーポレートガバナンス・コードの開示に置いてもコードを遵守しない理由を堂々と説明し開示することが重要で、遵守率が重要では無く、実効的なコーポレートガバナンスの整備・運用が重要なのではないか、と思いました。

<若杉> アメリカの場合には失業しても失業保険で補償されるというsafety netがあり、かつ景気が回復すれば雇用が回復するという循環があります。雇用する側は、jobに対して雇用するので、勤務先が変わることには無関心です。日本は終身雇用制の空気が残っており、労働の流動性が低く再就職が難しくなったり不利になったりします。このような慣行の違いは大きいことは確かです。アメリカのように首切りを簡単にやらないことが従業員にとってメリットであるならば、経営者はそのことをインセンティブにして、従業員にもっと効率よく働いてもらうようなHRM(Human Resource Management)を行うことが必要です。私は、日本の経営はHRMがへたくそで効率の悪い人の使い方しかしていないと思います。

2.コーポレートガバナンス論と上場会社と非上場会社の相違について

  日本にコーポレートガバナンスの導入を強く要望又はプレッシャーを掛けていた海外投資家は新型コロナウイルス危機時にはいち早く株式の売却を進めている。機関投資家にとって、株式は金・石油・不動産・為替・金利等と同一の投資対象商品であり、ポートフォリオ管理の一環として日々の売買を通して運用成績を競っており、当然の行動パターンであるが、株主が企業に資金を提供し企業の所有者であり、最終的なリスクをテークしている故に最大のステークホルダーとするとの理論とはかけ離れた行動であり、この株主理論は非上場企業には当てはまるも、上場企業には違和感が残ります。即ち、株式市場から株式を購入(企業には一銭も投資資金は入っていない)し企業が危機に直面した時は売り抜いてリスク・オフする機関投資家が企業の最終的なリスク・テイカーと言えるのかという疑問です。

<若杉> 欧米の投資家は株価が下がりそうになると売却してポジションを守ります。日本の投資家はじたばたせず、株価が回復するのを待ちます。つまり、待つことによってポジションを守るのです。株式市場がある以上、どんな売買も自由にできます。しかし、短期的な株価の変動で利益を追求する投機はリスクが大きく誰でも儲かっているわけではありません。短期の投資家の売買も何か情報をつかんで行っているわけですから、株式市場に情報を注入するという貢献をしているとも言えます。世界には、年金や金持ちが寄付した財団など、長期分散投資を原則としていて我慢強くリスクに耐えようとしている機関投資家もたくさんいます。短期的な視野のファンドばかりではありませんから心配は無用です。確かに、短期的なファンドが多くなると、株価の値動きvolatilityは大きくなります。その結果、利益を上げるファンドもありますが損失を被って駆除され退却するファンドも出てきます。世の中はうまくバランスが取れるようにできています。大事なことは、長期投資家が慌てふためいて狼狽売りをせず冷静に世の中の動きを見ることです。

  これ等の危機に企業が直面しても、企業の存続のため、一生懸命働く従業員・支援を継続する取引先・顧客・債権者の存在は大きく、又危機時においてもこれらのステークホルダーからの支援を得られるように常日頃から良質な経営を行うのが経営者の役割であると思われ、良質な経営は誰の為かの命題に対し、日本ではステークホルダーと考える理由かと思いますが如何でしょうか。

<若杉>従業員、取引先、顧客などのステークホルダーを守るためには、健全な競争市場を確保し市場原理が働くようにすることです。したがって、規制の多いわが国では、競争を阻害する規制を排除する規制緩和が重要です。規制緩和こそステークホルダーを守ることです。それは従業員の労働市場でも、消費財、資本財の市場でも同じです。

3.武正雄さん

  第一回目のガバナンス勉強会講義を拝聴いたしました。こういう形での講義も、プラス面も大いにあるなと感じた次第です。ありがとうございました。早速恐縮ですが、3つのご質問があります。

質問その1;『営利とは、事業による利益を出資者に分配する』と定義されていますが、それと同時に『更なる利益最大化のために事業に再投資する』という部分を加えておくべきだと考えたのですが、これはPL上は間違っているのでしょうか?

<若杉>経営者に合理的なインセンティブ(業績連動報酬など)が働いていれば、内部留保により積極的な投資をすれば高い収益性が期待できると判断すれば、経営者はおのずと内部留保をします。逆に、投資機会が無ければ内部留保はせずに配当します。そして、利益の使い道を株主に委ねます。無能な経営者、適切インセンティブが働いていない経営者は、いたずらに内部留保をしていたずらに社内に資金をため込んで、何が起こってもカネがあるから大丈夫と嘯くことになります。

質問その2;『すべての企業の粗付加価値の合計がGDP』というご説明は、あらためて明白で分かりやすいと思いました。であれば、25年間も実質GDPが横ばいである我が国の現状は、『企業がさぼっている』というとらえ方でよろしいのでしょうか。

<若杉>私はそのとらえ方が正しいと思います。資本に限って言えばこの間、資本蓄積は進んでいますが資本の収益性も下がっています。経営者にしっかりした経営をしてもらって、資本の収益性を高め株主へのリターンを高めてもらおうという運動が、コーポレートガバナンス改革です。

質問その3;その『さぼっている企業』にけしからんと制裁を科す(CEOを替える)のが、コーポレートガバナンスの役割だという説明は正しいでしょうか?

<若杉>その通りです。取締役会がCEOを代えたり経営のやり方を変えたりすることができないと、さぼっている企業を鵜の目鷹の目で探しているファンドや他企業に買収され、取締役会ごと変えられてしまうことになります。日本の困ったところは、M&Aに対する人々の無理解と抵抗が強い点です。

4.山口公明さん

 コーポレートガバナンス研究会第一回のQ&Aセッションに向けて、資料P26の「ガバナンスとは、」について添付のようなものを作ってみました。これは東大の佐々木弾教授の「ガバナンスの自立と他律」(佐々木, 1)やOxford大学のColin Mayer教授が日経新聞(4月七日、「日本企業統治改革の課題))で言っていることを参考としたものです。二項対立的思考自体は好ましいものではありませんが、頭の整理には役立つでしょう。自身がガバナンスをリードしていることの限界やリスクをあまり感じない大手企業の一流経営者の思考パターンの理解にも役立つと考えました。

コーポレートガバナンスを見る視点

 表の左側が日本の企業経営者の一般的なスコープや思考パターンでしょう。ガバナンスは自分でやる=自律で全て問題ない、多様性も自分にとって利用価値の限度内で、集団の意思決定は形だけでCEOの専決。そして株主は結局短期の結果だ、等々。

 ガバナンスは機関投資家が長期志向なので彼らの利益を考えるように行動すればいいようなことを言う人がいます(ESGもSDGsも彼らが志向しているし)。しかし英国人のColin教授からすれば、英米の機関投資家(の大部分)は目先の経済的成功重視なので彼らの云うことを聞いていては長期的な発展に不可欠な環境、社会、人的投資などが犠牲になりかねないようです。一方、日本のCG改革ではあたかも理想的な機関投資家がどこかに存在するような想定だと思います。

 ガバナンスはこの表の中間のどこかを状況次第で行ったり来たりすると考えるべきなのでしょう。企業の歴史・文化・事業目的は国によっても、夫々の企業単位でも多種多様であり、ガバナンス構造もその成長段階によって違います。”prescriptive”, 「規範的」なガバナンス・コードはリスクが高いことを知るべきだとColin教授は自著で言っています(Colin, 2)。

 あくまでCEOと経営陣がガバナンスの主体(自律)であり、他律はそれを補強し、チェックする役目と考えていいのではと考えます。コーポレートガバナンスとマネジメントは車の両輪だと言われますが、自転車に例えれば、昔の前輪が大きく後輪が小さい自転車ですね。そして前輪駆動です。こういう監督やモニターする仕事を法律は「こうすべし、ああすべし」と簡単に言いますが、出来ている人は外から監視されるからではなく元々志の高い立派な人ですね。また自分がやって分かりますが、人のやることを外部者として監督する仕事は自分が直接やるのとは別の意味で難度が高く、要求されるコンピテンシーも違います。ゼロベースで勉強をし直さないといけません(私の好きな演歌や懐メロなら楽ですが)。

 ところで、短期利益ばかり追う株主と水準以下の経営者の会社でビジネスモデルも古い場合は、攻めのガバナンスや平時のガバナンスもワークしないのではと思いますが如何ですか?ここは資本主義の論理に従うのでしょう。

<若杉>日本では全体的に資本主義や株式会社制度に対する理解、リテラシーが低いので、資本主義や株式会社制度の良いところを生かせていないと思います。それでいて悪いところばかりあげつらっているように思います。スポーツでもルールを正しく理解し生かしていないと、国際的な試合では勝てないということと共通の面があると思います。ところで、Colin教授はの指摘は大変面白いと思います。株主構成の問題からアプローチしていますが、日本の経営者にはインセンティブシステムが働いていないことを見落としているので、一面的な見方のように思います。株主がいくら影響を強めても、経営者に対して、株主の利益に連動したインセンティブシステムが機能していなければ、株主構成は関係ない、つまりirrelevantなのではないでしょうか。

山口公明

参考:

佐々木弾. (2015). ガバナンスの自立と他律. 企業統治の法と経済(田中/中林編). 有斐閣

Colin. Mayer. (2018). Prosperity: better business makes the greater good. Oxford University Press

以上

<以下、藤島さんの速記録>

司会(三井) 質問や感想を既にいただいています。まず先生から紹介してください。

若杉 4人から質問をいただいた。まず三井さんの質問。これはインセンティブのことを言っている。貧しい時代は皆が働くので不要だが、今の時代は一生懸命働いてもらうために必要。人がやりたがらない仕事は、需給の関係で報酬は高くなるはず。

三井 前提となるのは企業の収益確保。長期投資家でもESGだけでは株式保有できない。収益獲得のために社会にいいことをやる、が大事。この点、例年はトーンがクリアだったが、今回はそうでもない気がした。

若杉 松浦さんの質問。最初の点。アメリカは失業してもセーフティネットがあり、雇用が回復すればまた働ける環境が整っている。日本は雇用が固定的など、慣行が違う。長期雇用・終身雇用が日本のメリットなら、それを魅力としてもっと従業員に頑張って働いてもらわないといけない。日本の会社はHRMができていない。人の働かせ方が下手。国情の違いではなくマネジメントのやり方が問題。

松浦 日本の企業は従業員、取引先などステークホルダーと調和しながらやっていく、というのが日本全体の安心安全につながる、という部分があるのではないか。まず企業が国民のため、という部分に配慮することが必要とされている。企業が国民の幸福のためにあるなら、その国民はどのような幸福を求めているのか、が大事だと考えられる。その意味でそれぞれの国情を考える必要があるのではないかと思い、質問した。

若杉 ステークホルダーをリスペクトするのはよいが、資本主義においては市場原理を守ることが大前提。その上で国情に合わせた尊重をすることはよい。しかし利益が上がらないことの言い訳にしてはいけない。

 国民が皆、幸せになるためには、名目GDPが増えないと幸せになれない。そのためのガバナンスではないか。どれだけいいことを言っても、企業価値が向上しなければ皆が幸せになれない。

松浦 この25年間、GDPは伸びていない。単体から連結に経営の軸が移ったため。ほとんどの製造業は海外に進出、成長は海外で追求している。しかし日本国内の工場などが貢献するGDPには反映されない。そのことを以って悪い経営とはいえないのでは。日本企業が海外のGDPをどれだけ伸ばしたかのデータを見ないと何とも言えない。

若杉 日本の人口は減少している一方、貯蓄は資本として蓄積され増加している。GDPが伸びていないのは資本の生産性が上がっていないため。

松浦 高齢化で生産人口が減少している。生産人口との比率で調べないと分からない。

 海外に投資した先からの配当は日本のGDPに貢献していないのか。日本のGDPに貢献しないならば、海外で投資してもだめ。

松浦 日本の工場を増設できないから海外に進出した。しかしコロナでグローバルなサプライチェーンはズタズタになっている。今後、このリスクを経営者はどう考えるのか。国内で徹底的にロボテクを活用するのか。注視していきたい。

若杉 コロナ後に何ができるか、日本の経営者に問われている。

山口(隆) GDPと連結経営に関連して。自動車産業においては少なくとも今後、グローバル化の流れが衰えることはない。それを支える基礎的・システム的な投資が回収できているかは問題。ロイヤリティ収入など、各国規制で必ずしも確保できていない。連結業績の指標はクリアできているのか。高収益と言われるメーカーでもギリギリで、今回のコロナで吹っ飛ぶ程度。スタンダードを何にするのかと言えば株主の視点なのかもしれないが、その株主が不明確である。譲渡自由性のため株主と言っても誰を相手にすればいいのか、機関投資家と言っても誰なのか分からない。どこまでやればガバナンスが効いていることになるのか。

若杉 松浦さんの2点目と似たポイント。株式は誰が持っても、株主価値の最大化が目的であることは、経済学的においてコンセンサスとなっている。誰が持っても関係ない。実際にそうはなっていない面もあるかもしれないが、そう考えないと、顔が見えない以上は株主を大事にしなくてもよい、になってしまう。長嶋茂雄の言「ジャイアンツは永遠に不滅」のジャイアンツは、その時の選手ではなく器である。

山口(隆) 株主を大事にすること、譲渡性の大事さは十分承知している。それがゆえに課題もあるのでは、という問題意識を提起した。それではどうすればよいか、という解決策はまだない。

若杉 ヘッジファンドなど短期売買の投資家は、企業の長期的価値を考えていない。そういう株主がいても仕方ない。その一方で年金や財団は長期分散投資しており、そういう投資家が長期的に企業を見ている。株式市場の悪いところばかり見ないで、健全な投資家に注目するべき。裁定取引が増えればボラティリティが増えるのは事実だが、長期的なトレンドでは株価は業績で動いている。ノイズは大きくても株式市場の在り方を変える必要はない。

松浦 株主が最終のリスクテイカーなので尊重すべき、という点に疑問がある。倒産など最大のリスクに企業が陥った際、従業員が会社を去らないこと、取引先が納入を継続すること、顧客が購入を続けること、が企業の命運を決める。増資などで命脈を保ったというはほとんど聞かない。債権者が会社を支えるかの方が大きい。したがってステークホルダーの信頼を常日頃から得ることが必要だと思う。

若杉 株主責任の有限性の問題。ただ日本の場合、大きい会社はなるべく潰さないようにして、ダメな会社であっても助けてしまう。ターンオーバーがない。そのため新しい企業が入ってこない。本当に守る価値のある会社なのか、むしろばらばらにした方がいいのか。丸ごと残すことはあまりよくない。

次は武さんの質問。まず再投資の件。会社は営利目的の下、収益を配分するか再投資するかは経営者に任される。その判断は株主との関係で決まる。経営者に合理的なインセンティブが働いている場合、再投資で高成長が望めるなら再投資するし、そうでなければ配当して株主に再投資は委ねられる。無能な経営者がいたずらに再投資することは、投資家がしっかり見張るべき。法律で考える問題ではない。

 アップルやマイクロソフトはずっと無配だった。そういった会社は収益分配だけで説明できない。このような企業の株主価値最大化とは何なのか。

若杉 株主は利益が大きければよい。それが営利性である。市場メカニズムによって最大化の要請が働く。株式市場が健全に働いていればよい。

ガバナンスの役割について。取締役会がCEOを変えたり経営を変えたりしないと、ヘッジファンドなどにより経営全体が変えられてしまう。早めに取締役会が機能すべきだが、そうでなければM&Aになる。

次は山口(公)さんの質問。

山口(公)ほとんどこれまでの説明でカバーされている。同意することに止まらず議論を展開するときりがない。1点、表を書いたので説明する。二項対立ではなく、間に解があると考える。オクスフォードのコリン氏が日経新聞に発表した論考をベースにした。長期志向が望ましいが現実は短期主体が多い。自律と他律について、他律主体のガバナンスでも、経営陣が自らガバナンスの意識を持っていないと機能しないので、自律も重要。意思決定は実態として社長個人がしており、色々な人への忖度がされているが、形としては組織で決定していることになっている。多様性を持った組織が意思決定しなければならない。日本企業の状況判断は平時がベースで、毎日を真面目に回すという発想が多い。有事を考えること自体がネガティブに捉えられるのは問題。多様性の言葉は都合の良い使われ方をしているが、外部の観点で考えることが大事。リスクの考え方も同じく、外部リスクを考えないといけない。また日本企業はどこかうまくいっていれば全体に問題がないと考えがちだが、例外的なケースで判断するのではなくデータで判断すべき。

若杉 コリン氏の論考は4/7付け日経新聞にある。株主を持ち合い関係と外部機関投資家など、インサイダー株主とアウトサイダー株主に分け、インサイダーが減っているので経営を変えるべきとしている。

これまでの議論につき、ブログに自分の回答を書いておいた。ぜひ見てほしい。

武 折角集まったのだから、最後に、初参加の皆さんに自己紹介をお願いしたい。

(個人情報につき以下略)

以上

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