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2020 コーポレートガバナンス研究会:第10回「独仏のコーポレートガバナンス改革」-その1-

世界のコーポレートガバナンス改革:初期の流れ概観

・世界的なコーポレートガバナンスへの関心や従来のコーポレートガバナンス・システムへの批判の高まりに伴い、1990年代以降、アメリカ、イギリスだけでなく、ドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国、また日本などでもコーポレート・ガバナンスが注目されるようになった

1.アメリカのコーポレートガバナンス改革:ERISAからAvon Letterへ

1974年 エリサ法(ERISA;従業員退職所得保証法):投資顧問などの年金資産の運用受託者は、厳格かつ広範な受託者責任を意識した運用が求められるようになった
1979年 エリサ法改正:投資に関する義務条項の追加 → 受託者による分散投資を実質義務化 ⇨ 年金資金が株式や投資信託に流入
1988年 エイボンレター:エイボン社の問い合わせに対して企業年金の監督官庁である労働省より「年金基金の議決権行使を義務化する」旨の通達がだされた
 ①これを契機に年金基金の機関投資家化が始まる。企業年金は「物言う株主」として株主価値向上に向け企業へのプレッシャーを高めることになった
 ②カルパース(CalPERS;カリフォルニア州職員退職年金基金)が議決権行使を始めとする株主活動を活発化(Shareholder activism)
  1988年 米国企業に対する独自のコーポレートガバナンス・コードの実施
  1997年 イギリス、フランス企業に対するコーポレートガバナンス・コードの実施
  1998年 ドイツ企業に対するコーポレートガバナンス・コードの実施

2.イギリスに端を発する現代コーポレートガバナンス改革

1992年 取締役会のアカウンタビリティー強化と非業務執行取締役の登用を求めるキャドベリー委員会報告
1995年 取締役報酬のあり方についてグリーンベリー委員会報告
1998年 ハンペル委員会報告が、コーポレートガバナンス原則と、機関投資家のベスト・プラクティスから構成される統合規範(Combined Code)の原案を作成
  -その後 ロンドン証券取引所は統合規範を上場規則化
  -さらに、イギリスのコーポレートガバナンス改革が欧州大陸諸国に波及

3.欧州大陸におけるコーポレートガバナンス改革の動き

(1)OECD(経済協力開発機構)のコーポレートガバナンス原則
1996年:OECD; 閣僚理事会の要請により、コーポレート・ガバナンスに関する経済諮問グループを設置
  –米欧日の6名のメンバーで構成された経済諮問グループは、経営実務家による討論集会などを経て、OECDに対し報告書を提出
1998年4月 OECDは、報告書を受けて特別プロジェクト・チームを設置し、原則の作成を命ずる
1999年5月 閣僚理事会でプロジェクト・チームの報告を承認
1999年「OECDコーポレート・ガバナンス原則」を発表
  -政府間組織の主導によって初めて作成されたコーポレート・ガバナンスに関する原則
  -拘束力はないが、各国政府や民間部門がベンチマークとして利用することを期待
2004年 OECD「改訂コーポレート・ガバナンス原則」
  -社会状況の変化に対応して内容を強化

2)フランスのコーポレートガバナンス改革
・フランスでは1980年代からコーポレートガバナンスに対する取り組みが始まり、英国と並行して、民間の自主的な取り組みが進められた
・取締役会会長とCEO が同一人であり、PDGとして大きな権力を握っていることがコーポレートガバナンス上の大きな問題であった
1995年 第一次ヴィエノ報告
  -社外取締役選出や取締役会における委員会等の設置についての提案
  -その後、CalPERSが策定したフランス企業に対するコーポレートガバナンス・コードがこれをポジティブに評価したことから、その実効性が高まる
1999年 第二次ヴィエノ報告
  –CEOと取締役会会長(PDG)の分離を主張

3)ドイツのコーポレートガバナンス改革
・現代株式会社の始祖である東インド会社を生んだオランダは、ドイツと比較的類似する経営機構を有し、取締役会が存在することと、年金基金制度が発達していたこともあり、早くも1997年にはコーポレートガバナンス・ガイドラインが作成された(ペータース報告書)
・対照的にドイツでは、ガバナンス改革に関しては90年代後半まで目立った動きがなかった。その背景には取締役会と執行役会の分離という二層制の経営統治機構や銀行の強力なガバナンスの存在があった
1998年~2005年:シュレーダー政権のもとで資本市場改革やコーポレートガバナンス改革に着手された

(若杉 敬明)

 

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