JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2020 コーポレートガバナンス研究会 第10回「仏・独のコーポレートガバナンス改革」-その3:フランス-

Ⅰ 現代フランスの社会と経済の特徴

Ⅰ フランスの社会と経済
1.伝統的に中央集権的な国家運営
ブルボン王朝の絶対王政やナポレオン帝政など
2.エリートの間に人脈による強い横の繋がり
-エリート養成学校グランゼコール等の出身者が政府の要職を歴任した後、民間企業に移って企業経営にあたる
 ・グランゼコール:フランス国立行政学院(ENA)を頂点とする高等職業教育機関
-いわばインナー・サークルにより国・企業が運営されており国の方針が企業経営に行き渡りやすい構造
3.株式会社においては国&機関投資家が主要な株主
-資本市場は未発達
4.株主重視よりステークホルダー重視(日本に類似)
5.重要な産業は国有
-株主利益より雇用の継続を重視 ⇨ 社会主義的傾向が強い
6.官僚主導型企業経営
-公共部門と民間企業との強力な人的関係(↑上記インナーサークル)
 ・大企業のトップは天下り高級官僚
-大株主による株式保有&企業間の株式の相互持合
-取締役の相互派遣 → その意味では社外取締役が定着

Ⅱ フランスの会社制度
1.取締役会制度の選択制
-伝統的な単層制と独型の二元制か (1966商法改正以降)
2.株主総会で選任された取締役が業務・会計を監査
3.取締役会会長と社長(CEO)を兼ねたPDGに権限集中
4.取締役は株主であることが要件 (←日本と異なる)
-目的:株主と取締役の利害の共有
6.従業員取締役
-任意であるが採用可能(日本では不可)
6.独立取締役
-分散株主型企業:2分の1以上は独立取締役で構成すること
-支配株主型企業:3分の1以上を独立取締役で構成すること
7.委員会の設置
-AFEP-MEDEFコ一ドに従い,大多数の企業で委員会を設置
8.取締役兼任数
-取締役としての義務を果たすために5社までに制限
 ・社名開示を義務づけ ←日本では特別に制限はない
9.経営者報酬の開示
-個別開示を義務づけ
10.2倍議決権
-株式を2年以上保有する株主の議決権は2倍

Ⅱ フランスのコーポレートガバナンス前史
-1966 商法改正~1986 シラク内閣の民営化法-

1.取締役会選択制の導入
1966 商法改正により取締役会構造の選択制導入
-背景:取締役会設置の株式会社 (Société anonyme: SA)の問題
 ・取締役会会長兼最高経営責任者PDGへの権限集中がつねに問題視されてきた ⇒PDG(President-Director General)
-伝統的な単層型に対して、ドイツを模範にした二層型(Two-tier)取締役会を導入し、選択制に移行 (日本と類似)
- 株主総会の三分の二以上の決議で移行可能
  ・依然として絶対的多数の企業が一層型を堅持(日本も類似)
-取締役会長とCEOが ①同一人物であるPDGか、②別人であるか、は選択制
2.フランスにおける一層型 vs.二層型ガバナンス体制
(1) 一層型(アングロ・サクソン型;従来型)
-多くの株式会社が、取締役会会長とCEOを兼務する強いPDGのリーダーシップの下に取締役会が業務を執行する経営機構を採用 (2) 二層型(ドイツ型)
-統治委員会は取締役会と執行役会とで構成
  ・業務執行に携わる執行役会vs. 監督機能に特化する取締役会
(3)選択制
-いずれの形態をとるかも、他方に移行するかも無制限に可能
(4)一層型取締役会の構成・職務
-伝統的な取締役会(Conseil d ‘administration CA); 取締役 (Administrateur)3~24人で構成される
-3~24人 会社の業務の方向性を定めその実施を管理する
  ・取締役会長 (PCA) の選定・解職、執行役(社長、DG)の選任・解任 -会社の代表権を取締役会長または執行役のいずれに付与するかの決定権限を有する
-会社の目的の範囲内で、かつ法律により明示的に株主総会に付与された権限に従い、取締役会は会社の経営に影響を及ぼす一切の事柄を扱い、協議の上これを決定する
  ・株主総会の招集、議題決定、業績報告、利益処分案等
-決議は取締役の多数決により決せられる
  ・可否同数の場合は定款に別段の定めがない限り取締役会長が決定権を有する、ただし国営会社には例外あり
(5)二層型取締役会
①取締役会 (Conseil de Surveillance)
-構成員(Membre du Conseil de Surveillance)は株主総会により選任・解任される;3~18名
  ・任期は最長6年
  ・定款の定めにより 従業員が直接選挙により取締役会構成員選任し含めることもできる
     *その員数は三分の一を超えず最大5名まで
-取締役会は、執行役会 (Directoire) を監督する機関で、ドイツの取締役会同様の機関、執行は行わない
②会計監査役 (Commissaire aux comptes)
  ・取締役会や執行役会に出席するが、取締役会構成員とは別の役員
③執行役会(Directoire)
-構成員(メンバーMembre du Directoire;取締役会により選任される。1名以上5名以内(上場会社の場合は7名以内)
  ・自然人であることを要する
  ・定款で定められている場合を除き、株主である必要はない
  ・取締役会構成員は執行役会構成員を兼任することはできない
  ・任期は、定款に定めがなければ4年で、定めがあるときは最低2年かつ最長6年である
  ・構成員は、通常株主総会、定款で定められている場合においては取締役会により解任される
-執行役会の運営
  ・合議制の経営執行機関
  ・執行役会がなす経営上の決定は定款に定められた規則による
  ・執行役会は合議制の経営執行機関
  ・執行役会の権限は広汎で、会社の目的および株主総会および取締役会に法律上留保された決定による制約を受けるのみ
-代表執行役:取締役会は、第三者に対して会社を代表する者として、執行役会構成員1名を選定しなければならない -執行役会長 (Président du directoire)
  ・日常的経営活動を指揮する
  ・取締役会によって指定される執行役(Directeurs Généraux)により補佐される

◆ ガバナンス改革の芽生え
-1980年代 企業に対する批判が社会の根底に広がっていた
  ・労働組合と国家との強い結びつき
  ・PDGへの権限集中
  ・ 社外取締役の監視機能不全
  ・取締役の独立性の欠如
  ・反動として比較的早くからガバナンス意識が芽生えた
-1980年代半ばには、国による企業活動への関与の見直しが始まる
  ⇒1986年8月シラク内閣のもと民営化法成立

(若杉敬明)

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