JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2020 コーポレートガバナンス研究会:第12回「わが国のコーポレートガバナンス改革」

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第12回研究会「わが国のコーポレートガバナンス改革の歴史と現状」

-目次-
Ⅰ わが国のコーポレートガバナンス改革の歴史
Ⅱ わが国コーポレートガバナンス現状
  1. 株式会社とコーポレートガバナンス-JCGRのコーポレートガバナンス調査より-
  2. JCGIndexの概要
  3. JCGIndexの全体像
  4. JCGIndexと企業業績
Ⅲ <参考>2005年JCGIndexサーベイ
Ⅳ JCGRのコーポレートガバナンス原則

はじめに

 最終回の今回は日本のガバナンス改革を振り返った後、JCGRのコーポレートガバナンス調査の最新の結果により日本企業のコーポレートガバナンスの現状を紹介する。 それとともにコーポレートガバナンスの理論と現代のベストプラクティスを総括する。ここでは、JCGRのコーポレートガバナンス原則の要約を紹介することにより、現代コーポレートガバナンス論を示す。

Ⅱ わが国企業のコーポレートガバナンスの現状

 JCGRは2002年以降東証一部上場企業を対象にコーポレートガバナンス調査(JCGIndexサーベイ)を行って来た。2014年からアベノミクスの下で、従来とは全く異なるコーポレートガバナンス改革が行われるようになってきたので、それまで継続性を重視し、ガバナンス評価を大きく変えない程度の変更しか、質問票・配点表に加えて来なかったが、2018年調査を休止し、2019年調査から質問票・配点表を大きく変更する調査を再開した。そこで2017年まで16回の調査をPhase Ⅰと称し、2019年以降をPhase Ⅱ調査と称している。驚いたことに、Phase ⅠからPhase Ⅱに移行しても大きな変化はない。そこでここでは、2002年以降の調査、つまりPhase Ⅰの調査にも基づきつつ、最新の調査(2020年調査)から日本企業のコーポレートガバナンスの現状を説明する。

(1)2020年調査における有効回答会社数は175社であった。JCGIndexの平均は52.0、標準偏差は12.5であった(スライド22)。分布の形はでこぼこであまりきれいではないが、これはサンプルサイズが少ない上に横軸の区間の取り方が5点と狭かったためであり、10点にすると正規分布に近いきれいな山型になる。このような調査において、正規分布になるということは、JCGIndexが的外れな評価尺度でないことを表していると考えて良い。JCGIndexもその構成要素であるカテゴリー別得点もこの約20年間、緩やかであるが上昇している。

(2)スライド24は、JCGIndexを構成する4つのカテゴリの配点と、175社の得点をまとめたものである。ガバナンスを表しているカテゴリーⅠおよびⅡの合計配点は60.4、それに対してマネジメントを評価しているカテゴリーⅢおよびⅣは39.6である。それぞれのカテゴリーにおける平均点の、配点に対する割合(充足率)を見ると、カテゴリーⅢおよびⅣは60%台で比較的高いが、カテゴリーⅠおよびⅡは30%台、40%台と相対的に低い。マネジメントに比較してガバナンスが弱体であると言わざるを得ないであろう。

(3)JCGIndexが平均より上方に1σ以上離れている企業を高JCGIndex企業と定義し、逆に下方に離れている企業を低JCGIndex企業と定義した。それぞれの企業数は22社、25社である(スライド25)。両者のカテゴリー別得点およびJCGIndexの違いを、高JCGIndex企業の得点/低JCGIndex企業の得点という倍率で見ると、ガバナンスを評価するカテゴリーⅠおよびⅡで倍率(3.57、3.09)が大きいことが歴然としている。しかし、高・低JCGIndex企業の差はどのカテゴリーでも高JCGIndex企業の方が大きいことが分る。

(4)Phase Ⅰ期間中における各カテゴリー得点の推移を見ると、緩やかであるがいずれのカテゴリーにおいても得点は上昇している(スライド27)。JCGIndexの推移もそれに対応して上昇している(スライド26)。しかし、マネジメント・カテゴリーの方が得点が高いという状態は一貫して継続している。

(5)高JCGIndexグループ企業と低JCGIndexグループ企業の比較

①高 JCGIndex 企業のほうが、企業規模が大きい。高 JCGIndex 企業は、総資産、売上高、時価総額従業員数のいずれをとっても、低 JCGIndex 企業の約 10倍以上で、圧倒的に大規模である。大企業であるということはJCGIndexが高いということでもあるのであろうか。これはPhase Ⅰにおいても一貫して見られて現象である(スライド30)。

②高JCGIndex企業の方が外国人持株比率が高い。CEOの年齢も、高JCGIndex会社の方が高い。

③なお、従業員数の増加を比較すると、2004年調査(付録スライド47)においては、大企業である高JCGIndex企業の方が増加率が高いが、2020年調査では低JCGIndex企業の方が大きい(スライド32)。高JCGIndex企業(大企業)と低JCGIndex企業(相対的に小企業)の間で構造的な差が生じていることをうかがわせているように思われる。

④2004年調査(スライド44、45)と同様、企業業績(ROA,ROE)は高JCGIndex企業の方が高い。しかし、株主にとってのパフォーマンスである株式時価総額は、過去3年で見ても5年で見ても、低JCGIndex企業では上昇しているのに対して、高JCGIndex企業ではむしろ減少している(スライド34)。③と同様に、両企業群での活力の差が顕著になっているのであろうか。

Ⅳ JCGRのコーポレートガバナンス原則(抜粋)

Ⅰ 企業の業績目標と経営者の責任体制
1. 現代株式会社のガバナンスは、株主の実質的所有とリスク負担に基づき株主に帰属する。
  ⇨これを株主のガバナンスと呼ぶ
2. 企業が目的を達成するためには、卓越した経営能力とリーダーシップをもつCEO明確な業績目標を掲げ、かつそれを責任もって実現しようとする経営体制を確立することが望ましい。これらを実現させるのが取締役会のガバナンスである。

Ⅱ 取締役会の構成と経営監督機能
3. 急速な技術革新を背景とするグローバル競争の下では、迅速かつ弾力的な企業経営を行うために、CEOを中心とする経営陣は絶対的な権限を持つ必要がある。それと同時に、経営陣が企業目的の達成に向けて最善の経営を行うよう優秀な経営陣を選任しかつ動機づけることが必要である。これを経営(マネジメント)に対する監督(ガバナンス)という。これがコーポレートガバナンスの本質であり、それを実践するのが取締役会のガバナンスである。
4. 経営に対する監督を有効に機能させるためには、監督と経営を明確に分離することが不可欠である。そのためには、取締役会は経営監督に専念し、CEOを中心とする経営陣は経営執行に専念する、という監督(ガバナンス)と経営(マネジメント)の分離が望ましい。その観点からは、取締役会は、株主に対して忠実で株主以外のすべてのステークホルダーから中立であるという独立性を確保することが必須要件であり、取締役としては独立取締役が望ましい。
5.監督の本質は経営陣から良質の経営行動を引き出すことである。そのためには先ず優秀な取締役会とCEOとを確保することが必要であるから、明確な選任・解任基準を定め持つ指名委員会の機能を確立することが不可欠である。次に、優秀なCEOが、公明正大かつ効率的に経営を行うよう動機付けることが必要であるから、CEOに対するインセンティブシステムを定めその有効性を検証する報酬委員会の機能を確保することが不可欠である。さらに、CEOの経営執行の体制である内部統制システム(リスク管理および内部監査を含む)の有効性を検証する監査委員会の機能を確保することが不可欠である。

Ⅲ 最高経営責任者の経営執行体制
6. 業績目標の実現を目指す経営がCEOの個人的な資質のみに依存しないようにするために、合理的なマネジメントシステム換言すれば内部統制システムの下で持続可能な経営を行わなければならない。
7. CEOは、マネジメントシステムとともに内部監査体制を構築し直轄すべきである。
8. CEOは会社全体の業績目標を事業部門・子会社に分解し、それらによって事業部門の経営を監督するべきである。つまり業績目標によって業績評価を行い、かつその業績評価に基づいたインセンティブ制度を実施すべきである。

Ⅳアカウンタビリティと透明性の確保 9. CEOは、IR投資家のエンゲージメントへの対応、および株主総会等を通じて株主と密接なコミュニケーションを図ることによりアカウンタビリティを果たし、株主の信頼に応えなければならない。
10. CEOは、株主以外のステークホルダーと公平・公正な取引を行うために、法律を遵守するとともに、資本主義経済の前提である市場原理を遵守しなければならない
11. これらの遵守つまりコンプライアンスの状況を、全ステークホルダーに対する広範かつ適切な情報提供つまりディスクロージャにより証明することがアカウンタビリティである。
12. アカウンタビリティよる企業の透明性の確保はCEOの重大な責務である。(以上)

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