JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2020 ファイナンス研究会:第12回「アライアンス」

1. アライアンスとは
2. アライアンスの類型
3. アライアンスとM&A
4. アライアンスのメリット
5. アライアンスのデメリット
6. アライアンスの注意点
7. Q&Aセッション

1. アライアンスとは

 アライアンス(業務提携)とは、複数の企業が協力し合って事業・業務を行うことである。すなわち、他社が持つ経営資源(技術・ノウハウ・人材・資金など)と、自社が持つ経営資源を組み合わせることにより、シナジー効果を誘引し効率的な事業運営により企業価値の創造を目指すことである。アライアンスは、提携する事業活動に応じて生産提携、販売提携、技術提携、販売提携等々に分類することができる。なお、取引がある企業同士がその関係を強固にするために株式を持ち合うことを資本提携というが、業務提携が資本提携を伴うとき資本業務提携ということがある。なお、特に取引関係や業務提携がないのに株式を持ち合うことを株式持合いという。業務提携は業務を通しての企業の結合であるが、業務提携が資本提携を前提として行われる場合通常、M&Aと呼ばれる。

2. アライアンスの代表的類型

 代表的な業務提携について簡単に説明しておこう。

(1)生産(製造)提携:自社の生産工程や製造工程の一部を他社に委託するという製造委託契約で行われる業務提携が代表的な生産提携である。製造委託契約においては、製造する製品の仕様、品質レベル、原材料、製造数量、対価、検収方法などが重要である。生産提携においては、委託側の企業は設備投資や人材確保などの努力をしなくても生産量を増やすことができる。他方、受託側の企業は自社の生産設備稼の働率を上げることができる。日常的な品質管理や欠陥が生じたときの責任等が問題になる可能性があるため、書面で契約内容をしっかりと合意し、不当な製品の受領拒否、対価の減額や支払遅延、不当な返品等、委託者の地位を濫用することがないよう注意が必要である。また、契約形態のひとつとしてOEM契約がある

(2)販売提携:他社の有する販売資源、つまりブランド、販売チャネル、販売力のある人材等を共有する目的のもとで行われるのが代表的な販売提携である。販売提携によりこれまで以上に販売力を向上させることが可能である。パートナー企業が相互に相手の販売能力を利用できれば相互に販売部門の効率が高まり価値創造が促進される。仮に一方の企業がパートナーの販売力を利用するだけでも、パートナーの販売余力が活用されるので相互の価値創造につながる。

・販売店契約:他社の販売チャネルや販売人材を活用する販売店契約。販売店(ディストリビュータ)が自己の名前と責任で仕入れた商品を指定されたテリトリー内で再販売し、在庫リスクを負担する契約

・代理店契約:代理店(エージェント)がメーカーの代理として、商品を販売する契約

・OEM契約:他社のブランドや信用力を活用する戦略である。受託者(メーカー)が、委託者(販売店)の商標で販売する製品の製造を受託する契約

・フランチャイズ契約:特定の商品やサービスの提供について独占的な権利を有する親企業(フランチャイザー)が、加盟店(フランチャイジー)に対して一定地域内での独占的販売権を与えブランド・ノウハウ等を提供し、加盟店が特約料を払う契約

(3)技術提携:パートナー企業が持つ技術資源および技術開発に関するノウハウ等を自社の技術開発などに活用する業務提携である。契約形態としては、特許やノウハウのライセンス契約や新技術・新製品の共同研究開発契約が代表的なものである。新技術の開発には一般に時間もかかるしリスクも大きい。共同開発により①開発がスピードアップされたり、②リスクを分散できたりというメリットが大きい。

・ライセンス契約:知的財産権の保持者(ライセンサー)が、ライセンスの許諾を受けた者(ライセンシー)に対し、契約条件の下で自由に使用することを許諾する契約

・共同研究開発契約:複数の当事者が、特定の技術または製品の研究開発を分担、協力して行うために締結される契約

3. アライアンスとM&A

 業務提携とM&Aは、他社の経営資源で自社の経営資源を補う点においては共通するが、違いは、相手方の事業または会社に対する支配権(経営権)の取得を求めるかどうかにある。業務提携は、M&Aと異なり、他社の株式、経営の取得までは至らない。その意味では、柔軟で緩やかな協力関係である。

つまり、M&Aが他社の経営資源を自社で取得するか、支配下に置くのに対し、業務提携は他社の経営資源を他社に残したまま自社でも利用することになる。

4. アライアンスのメリット

(1)業務提携は、すでにある他社の資源を活用するため、一般に、自社だけで当該事業を行うよりも、時間的、資金的にメリットがあり、またリスクも軽減できる。

(2)業務提携の場合、資本業務提携を除けば一時的に多額の資金が必要になることはなく、契約の締結により比較的簡単に成立する。例えば事業譲渡によるM&Aの場合、①まとまった買収資金が必要になるか、あるいは②合併、株式交換や会社分割のように対価として自社の株式を発行することが必要になるが、業務提携の場合、そのような資金あるいは資本の移動は一切必要ない。終了時においても、業務提携は、契約を解除することにより比較的容易に解消できる。

(3)そのほかに、①企業の独立性を維持できる、②M&Aに比べて手続きが簡単などのメリットもある。

5. アライアンスのデメリット

(1)業務提携の大きなリスクは、自社の技術やノウハウ、情報などの流出であると言われる。それまで会社内での管理で十分だった情報が、相互の会社に委ねられることがあるので、相手の会社のミスでそれらが流出するということも起こりうる。同様に、相手の会社の技術や情報は自社内で扱い慣れていないのでうっかり漏洩させてしまうことも考えられる。そのような場合、訴訟などのトラブルや信用の失墜につながる可能性もある。

(2)M&Aと比較すると、関連する事業や管理部門に関する判断が中心であり、かつ大きな資金も動かないため、法務部や法律専門家の監視が手薄になり、法務上の問題が生じた場合に対応が遅れ大問題になるケースがあると言われる。

6. アライアンスの注意点

 資本業務提携でなく単純な業務提携の場合、パートナーの経営権にタッチできないので、問題が生じて解決がスムースに行かない場合がある。そのために、あらゆる状況に備えた契約を締結する必要がある。M&Aの場合とくに買収の場合は金で解決できるので容易そうであるがデューディリジェンスに大変な作業量が必要となるように、業務提携も約束だけで金の問題などがないので契約が簡単そうであるが、実はあらゆる事態を想定した契約の締結には大変な交渉力が必要になる。わが国の企業は簡単に外国企業のM&Aを手がけるが、それは厄介な交渉を伴う業務提携を回避しようとするからではないだろうか。 (若杉敬明)

https://www.ma-cp.com/about_ma/business_alliance.html
https://masouken.com/資本業務提携のメリット・デメリット/?permalink=アライアンスとM&A
https://masouken.com/アライアンスとM&A
https://www.komon-lawyer.jp/column/strategy/column33/

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