JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2022コーポレートガバナンス研究会 第1回「コーポレートガバナンス-序-」

第1回 コーポレートガバナンス-序-

Q&Aセッション(メールでの質問Qに対する私の答Aです)

Q1-1:(今後の内容かもしれませんが)ベストプラクティスとして欧米の事例をどのように理解すべきか、という点について質問させてください。よく、ベストプラクティス(またはジャストインフォメーションとして)欧米の事例が取り上げられますが、各国の歴史や商習慣、法規制が異なる中で、欧米をみよという風潮に違和感を覚える場面もあります。

A1-1:ベストプラクティスについては7月の第4回研究会で取りあげますのでここでは、要点のいくつかだけに留めておきます。ベストプラクティスとは例えば大谷選手です。アメリカでも日本でも子供たちが大谷選手のような野球選手になりたいと頑張っています。大人でも、どうやって大谷選手ができたのか、参考になることはないかと、NHKの大谷選手に関する特集番組を観ています。そういう子供たち、大人にとって大谷選手はいわばベストプラクティスです。もちろん他の優秀な選手を憧れのターゲットにしている子供たちもいます。スポーツの世界では体格やタイプでお手本になる選手は異なります。ベストプラクティスは一つしかない絶対的なものではありません。

 株式会社について考えてみましょう。株式会社は始めに理論モデルがあってそれに沿ってできたというものではありません。自然発生的に始まり、それが時代や環境にあった仕組みだということで広まり、法律ができ制度化されたものです。その意味では株式会社制度は企業に関するベストプラクティスです。その制度の上にさらにプラクティスがあるのですから、法律はいわば法律成立当時のベストプラクティスの骨格です、大河ドラマ「青天を衝け」では渋沢栄一がフランス滞在中にカンパニーを知り、優れた制度であるとして日本に持って来たと描かれていました。同様に資本主義を受け容れた国では資本主義にあった企業制度であるとして株式会社制度を導入しました。世界各国の株式会社には下の3.2.にあるように、共通の特徴があります。その上に築かれたベストプラクティスはどの国のものかにかかわらず参考になるものがあるのではないでしょうか。しかし、国によってビジネス慣行などが異なりますから、いずれの国をベストプラクティスとするか、あるいは色々な国のベストプラクティスをつまみ食いするとか、賢く選択する必要があります。

 東証のコーポレートガバナンスコードはOECDのコーポレートガバナンス原則をお手本として東証と金融庁がベストプラクティスと考えたルール集です。ベストプラクティスは上述のように絶対的なものではありませんから、法律にはせず東証の規則として、合理的な根拠があれば厳守しなくてもよいということで、“Comply or Explain”という方式を採っています。

 長くなりましたのでこのくらいにしましょう。7月のQ&Aセッションで議論したいと思います。

Q1-2:一方、資料のpp.17-24においては株式市場からの企業評価の指標として、株価を出していただきました。コーポレートガバナンスの習熟度合程度だけで株価が決まるわけではないと思っていますが、欧州(ロンドン)は浮き沈みがあり、傾向としても米国ほど右肩上がりというわけではない中でも、欧米(ロンドン)のコーポレートガバナンスは、日本企業が見習うべきベストプラクティスなのでしょうか。

A1-2:GDPや株価のデータは、世界の国や企業が成長しているのに対して、日本は相対的に地位を下げている。企業の力が落ちているのではないかと問題を提起するために引用しました。株式会社の経営陣に経営能力を向上させ良いパフォーマンスを上げさせるのが、(会社法が期待している)取締役会ガバナンスの機能ですから、日本の取締役会のガバナンスは真の改善、改革が迫られているというのが私の個人的意見です。

Q1-3:(こちらも今後の内容なのかもしれませんが)業務執行役員という役職は世界的に一般的なのでしょうか。 また、日本ではなぜ、取締役と業務執行役員が同じという企業が比較的多いのでしょうか。

A1-3:業務執行役員とは取締役会で決定した業務意思決定を実行に移す役員という意味で、名称は国によって違いますが、どこの国の株式会社にも必ず業務執行役員がいます。

「日本ではなぜ?」の答は知りませんが、私は以下のように観ています。わが国では、明治の中頃にドイツ商法をお手本として商法が成立しましたが、そこでは監査役が監督機関で取締役会は業務執行機関とされました。したがって取締役は業務執行役員です。それが日本の監査役制度です。1950年に英米流の取締役会制度が導入されましたが、明治以来の取締役=業務執行役員という制度が残ったのであろうと推測しています。日本の明治以来の監査役制度についてはコラム「日本の監査役制度」を参照してください。(若杉敬明)

第1回研究会に関する参考資料

1.コーポレートガバナンスとは

 -数多ある「企業」の中の株式会社において、その経営を望ましいあり方に方向付けること
 -それが問題になるのは、株式会社においては「所有と経営」が分離されているからである

2.企業とは

 ー企業とは、事業として財・サービスの生産・流通を行う経済単位のことをいう。ここで事業とは、企業が一定の目的を持って行う活動のことをいう。また、企業それ自体のことを事業ということもある。

2.1.わが国の企業体系

 -法人企業:それぞれの法律(業法)に基づき法人格が与えられ、「個人と同様に法的な権利を持つことや、義務を負うこと」を認められた企業をいう。
 -個人企業:法人として届出を出さずに個人で事業を営む自然人を個人事業主と言い、個人事業主の企業を個人企業という。換言すれば、個人が単独で資金を出し事業を営む企業である。

2.2.私法人と公法人

 -私法人:民間法人とも呼ばれ、基本的に国家権力や公共団体から強い影響を受けない法人
 -公法人:国家の下に特定の国家目的を遂行するために設立された法人。公社、公団、公庫、金庫、公共組合、公共企業体など。広義には地方公共団体も含む。ただし、明確な定義はないと言われる。
 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/syahotyou/dai6/6siryou6.pdf

2.3.営利法人と非営利法人

 -非営利法人:利益を上げてもそれを出資者や社員に分配しない法人のこと

 -営利法人:対外的な経済活動により得た利益を特定の構成員に分配することを目的とする法人。社団法人にかぎられ,財団法人には認められない。2005年以前の改正前商法52条や有限会社法1条は,「会社は営利を目的とする社団である」旨を規定していたが,会社法ではこの規定は削除された。しかし,株主は剰余金の配当や残余財産の分配などを受ける権利を有する。したがって,上記の目的から会社は営利法人である。
 わが国では、①会社法が定めている株式会社、合同会社、合資会社および合名会社の4会社、②士業会社、③特定目的会社、④特殊会社、⑤投資法人、⑥地方共同法人が営利法人であるが、多数あるその他の法人は全て非営利法人である

 -士業会社:https://www.takumi-tax.jp/2018/03/post-596.html
 -特定目的会社:https://ja.wikipedia.org/wiki/特定目的会社
 -特殊会社:https://ja.wikipedia.org/wiki/特殊会社
 -投資法人:https://ja.wikipedia.org/wiki/投資法人
 -地方共同法人:https://ja.wikipedia.org/wiki/地方共同法人

2.4.株式会社とコーポレートガバナンス問題

 -営利を実現するために付加価値の最大化を目指す法人はわが国では会社法の4会社のみである。その中で、日本経済のパフォーマンスを左右するのは株式会社である。
 -日本経済が健全な発展を遂げるためには、株式会社の経営が重要である。株式会社において良質の経営を引き出す機能が取締役会のガバナンスである。

3.資本主義と株式会社制度-コーポレートガバナンス問題の原点-

 -わが国の経済は、他の先進諸国と同様、自由主義・民主主義を原則とする資本主義をモデルとしている。その上で、株式会社制度を採用し、経済の安定と成長を遂げようとしている。

3.1.資本主義の基本原則

(1)自由経済
 -競争原理の下、市場原理によって決まる市場価格・資源配分の決定を尊重する
 -自由な経済活動・企業活動にともなう経済のリスクを容認する

(2)付加価値の生産と資本・労働への分配
 -企業においては、資本と労働との共同で人々が欲する財・サービスの生産・流通を担う
 -その過程で付加価値を創出する。それを資本と労働とに分配し、企業に労働や資本を供給する人々に収入をもたらす

(3)出資者が企業の所有者
 -価値あるものの私的所有を認める私有財産制度を前提とし、企業も私有財産であると認める
 -企業への出資者を所有者と見なし、企業に対するガバナンス(支配権)を出資者に付与する

(4)企業所有者のリスク負担
 -自由経済の下では企業活動の結果にはリスクをともなう。それをビジネスリスクという。
 -出資者は、企業活動の残余を利益として請求するという形でビジネスリスクを負担し、結果責任を負う

(5)企業の営利性
 -より豊かで安全な社会の実現をめざし、企業が出資者への利益分配を目的として事業を行うことを容認する

3.2.世界に共通の株式会社の特徴(詳細は第2回研究会)

(1)法人格の具備(法律上の人格;Corporation)
(2)株主の有限責任制
(3)株主による所有
(4)株式譲渡自由の原則
(5)取締役会への経営の委任

 -株式会社では、株主は取締役を選任して、取締役会に会社経営を委任するが、取締役は株主であることを要しない。つまり、株主は第三者に会社の経営を委任する
 -株主でない取締役と、株主との間の利害の一致を確保しないと、株主にとってベストな経営が確保されない。ここに、コーポレートガバナンスの原点がある

4.取締役会のガバナンス:世界のベストプラクティス-先取り-

A.ガバナンスとマネジメントの分離
 -原則として取締役と業務執行役員を別人とする

B.取締役会
 -独立社外取締役を中心に構成する
 -取締役会の職務 ①CEOの選任 ② 業務(営利)に関する意思決定 ③ CEOに業務執行を委任し、三委員会で監督する

C.三委員会の設置と職務
(1)指名委員会
 -株主総会に提出する取締役候補者を決定する
 -取締役会がCEOを選任するので取締役の選任を重視する
(2)報酬委員会
 -取締役・業務執行役員の個別報酬を決定
 -業務執行役員に対しては報酬のインセンティブ機能を重視
(3)監査委員会
 -①財務報告のレビュー ②内部監査人・外部監査人(会計監査人)の独立性検証 

D.独立取締役
-取締役会は過半数が、三委員会は全員が独立取締役であること

5.取締役会のガバナンスを補完する社会の諸機能

 急速な技術革新とグローバリゼーションの進行でビジネスの世界は大競争の時代である。厳しい環境に置かれた経営者は業績の不振などに悩まされともすると粉飾決算など不正に陥りがちである。しかし、社会には企業経営や経営者を監視・チェックする機能がある。

 税務当局  監督官庁 証券取引所 銀行・証券会社 格付機関 会計士 アナリスト 業界紙・経営誌 報道機関等々

 人は、他人から観られていると思うと悪いことができない-「見られることによる規律」と私は呼んでいます。それと同じように企業に関しても見られていると悪いことはできないので 経営者の自己規律が働く。これら外部からの目は重要であるが、企業には外から見えない事項も多い。
 これら外の目は重要であるが、外からは見えない経営事項も多い。経営者を、企業内にいて監視・監督できるのは、株主総会で株主が選任した取締役と取締役会である。

(若杉 敬明)

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