JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2022ファイナンス研究会 第1回「ファイナンス-序-」

ファイナンス研究会の開始にあたり

 現代の人類「ホモサピエンス」は、数十万年前に地球に誕生して以来、人々が集まり社会生活を行うことにより種族として発展してきた。現代においては、地球上の各地に散らばった人類は、それぞれ国を形成し経済や政治のシステムを作り生活している。わが国はじめ民主主義を基本とする資本主義国では企業形態の中心は株式会社であり、株式会社が経済を支えていると言っても過言ではない。400年の歴史を有する株式会社は資本主義に適合した優れた仕組みであるが、現在のように複雑な環境においては株式会社制度の運営は決して容易ではない。株式会社が人々の生活に貢献するためには、時代によって変質する資本主義の現状にあった株式会社制度のあり方を工夫していくことが不可欠である。その根本問題がコーポレートガバナンスである。株式会社を経営するのは経営者であるので、経営者の経営を社会が必要とする経営に誘導する仕組みが必要である。それが取締役会のガバナンスである。株式会社制度にはそれが内包されているが時間の経過とともに形骸化してしまった。20世紀から21世紀にかけて世界経済が大きく変容する中で、株式会社は業績低迷や経営者の不祥事などの問題を頻発させてきた。各国はコーポレートガバナンスのあり方に根本問題があると認識しコーポレートガバナンス改革を進めている。

1.ファイナンスとは
 人々は働いて収入を得ると,大半を日々の生活費に充てるが残りを将来の大きな支出や不時の場合に備えて貯蓄する。それらは株式や債券の購入に充てられたり,金融機関に預けられたりして,金融資産の形をとる。あるいは企業も一時的に余裕のある資金を金融資産などで運用する。逆に,将来の収入をあてにしてお金を調達し現在消費する人もいる。また企業は製品からの将来の収入を見込んで資金を調達して投資しようとする。金融機関といってもさまざまあるが、これらは余裕資金を持つ個人や企業から集めた資金で,株式や債券の購入,あるいは企業や個人への貸し付けを行う。
 貸し付けを受けた個人はその資金で、たとえばマンションやマイカーの購入に充てる。企業は,株式や社債の発行や金融機関からの借り入れにより資金を調達し,事業を拡大するために,工場を建設したり,内外の会社を買収したりする。そしてそれらの事業からの売り上げの中から調達資金を返済したり,金利や配当を払ったりする。このように個人や企業は資金を調達したり運用したりしている。このような資金活動は民間部門だけでなく、国や地方自治体も行っている。政府は,税金の徴収や国債の発行により資金を調達し,国民に生活基盤、教育・科学、衛生・保健等々に関する公共サービスを提供するほか,公共事業と称して民間ではできない事業を行う。そして,将来の税収や事業収入で国債の元利の支払いを行う。このようにさまざまな経済主体が資金を供給したり調達したりしている。これをお金の融通という意味で一般に金融といいます。個々の経済主体に関しては財務や財政など使い分けることもある。英語ではすべてファイナンス(finance)である。経済主体別には,個人金融(personal finance),企業金融・企業財務(corporate finance),国家財政(public finance)などと呼ばれる。

2.経済とファイナンス
 どのような職業であるかにかかわらず,人々は働いて収入を得て,それで生計を立てている。その収入を,毎月,衣食住や娯楽・交際等々のために支出して生活を楽しむ。しかし,ほとんどの人は,給料のすべてを使ってしまうのではなく,将来の大きな買い物,たとえばマイホームやマイカー,子供の教育資金,老後の生活費,あるいはいざというときの備え等々のために,収入の一部を貯蓄する。
 貯蓄を銀行に預けたとする。銀行は,多数の人から集めた預金を,事業の拡大などを目指す企業に貸し付ける。あるいは大きな買い物(たとえばマンションの購入)を使用としている個人に貸し付ける。もちろん,いずれの場合も,将来,きちんと返してもらえること、つまり回収できることが前提である。そのためには、個人であれば安定した所得が見込めなければならないし、企業であれば事業から十分な収入を上げられると期待できなければならない。
 事業を拡大した企業のばあい、事業の拡大で増加した売上高により利子を払い元本を返済していく。銀行の住宅ローンを利用した個人は将来の所得から元利を支払う。銀行は貸し付けからの元利収入で、預金をしてくれた人たちに利子を払ったり預金の引き出しに応じたりする。
 金融機関の役割は、個人から資金を集め企業に資金を供給し企業の活動を促進することである。銀行が貸し付けた資金を回収できなくなると、資金が思うように集められなくなり金融機能が麻痺してしまう。一昔前の話になるが、バブルの破裂後の1990年代半ばから世間を騒がせた銀行の不良債権問題は,銀行がきちんと返済してもらえると判断して貸し付けた資金が,景気低迷による業績悪化や倒産で回収できなくなったことが原因であった。もちろん、個人の中にもリストラなどで仕事を失い収入が絶え返済不能になった人も多数いた。いずれにせよ、銀行が貸付金を正常に回収できなくなり、預金の返済が危ぶまれるという状況になり、銀行が機能しなくなり、その結果、金融が正常に機能せず、日本の経済が停滞することになった。不良債権問題解決の目途が付くのに10年の歳月がかかた。
 また、2007年頃からアメリカのサブプライムローンの貸し倒れ急増に端を発した金融危機では、サブプライムローン関係の証券化商品に多額の投資をしたアメリカやヨーロッパの金融機関が大きな損失を出し、経営が脅かされることになった。その結果、一時的にではあるが、金融機関は資金を集めることができなくなり、企業に資金を供給することもできなくなった。金融危機により多くの人々が損失を被ったということもありますが、金融機能そのものに対する不安や不信が残り、金融が停滞したのである。その結果、とくに国民の貯蓄が大きい先進国の経済は数年が経過しても不振に喘いだ。
 金融において大事なことは、預けたお金が返ってくる、貸した資金は返してもらえるということである。逆に言えば、借りた人や企業はきちんと元利を返済しなければならないということである。それができれば、お金を預けた人は、最終的にそれを使って事業を行った企業からの利益や利子で元本を増やすことができ、将来、貯蓄した以上の金額を消費することができる。金融が順調に行われれば、お金が世の中を円滑に循環し、経済活動が活発になり、豊かで安全な社会が実現する。お金が円滑に循環するための原理を探るのがファイナンス論であり、本ファイナンス研究会の目的でもある。(若杉敬明)

 

第1回研究会「貨幣の価値-時間とリスク-」のための予備知識 

1.お金の需要・供給と金利

社会には、将来のために現在の収入の一部を貯蓄している個人がいる(また、将来の収入で返済する意図で現在お金を借りる個人もいる)。他方、事業拡大による販売収益で返済が可能であるとして、事業を拡大するための資金を調達する企業がある。また、わが国の政府は、(税収で賄うのが財政の原則であるが)特別な事業のために国債を発行し、個人や金融機関・機関投資家などから財政資金を調達する。金融機関やファンドは個人の貯蓄、年金資金などを集め、企業や政府に資金を供給する。このように、世の中にはお金の需要・供給のニーズや機会が数多ある。お(資金)を通し合うのが金融である。需要・供給がたくさんあれば、自ずと市場が形成され、その需要・供給から金利が決まる。それが金融市場である

2.株式会社と資本市場

株式会社は、営利を目的として事業を行い、付加価値の一部を利益として株主に分配する。これにより株主の財産価値は増加させる。株主価値の創造である。18世紀後半、産業革命により工場制機械工業という新しい生産技術が確立され、企業は事業を行うために長期の資金が必要になった。それとともに株式会社制度が発達し、株式による資金調達や社債の発行による長期の資金調達のニーズが増大し、資本市場(Capital Market)という長期金融市場が発達した。それとともに、長期資本による財・サービスの生産・流通が経済の中心を占める資本主義が拡大した。

金融:現在使うあてのない余剰資金を持つ人(投資家)が、資金を必要とする人や起業に資金を融通すること
金融市場:資金の融通という金融取引が行われる市場のこと
資本市場:期間が1年以上の取引が行われる金融市場。長期金融市場、キャピタルマーケットともいう。株式市場や公社債市場が代表的

3.金融と金融市場

  

4.直接金融と間接金融

4.1.直接金融

 企業が証券(株式や債券など)を発行し、事業に必要な資金を、投資家から直接提供を受けることをいう。企業は、事業で得た付加価値から賃金を支払った残りの利益を、債権者や株主などの投資家に分配する。一方で、投資家は企業に直接資金を提供しているため、企業が倒産した場合は、提供した資金を回収できないリスクを負担する。この直接金融が行われる場が証券市場である。

発行市場:証券の発行・取得が行われる場
流通市場:既に発行された証券の売買が行われる場

この2つの市場が有機的に関連し、相互に影響を及ぼすことで、証券市場は資金の効率的な配分・利用という機能を発揮する

4.2.間接金融

 企業が事業に必要な資金を、金融機関(銀行など)からの借入れることを間接金融という。金融機関から企業に貸し出される資金は、預金者から集めたお金であるが、それが誰に貸し出されるかについては金融機関が決めるのであり、預金者は、自分の預金がどの企業に貸し出されているかを知らない。それゆえ、「間接」金融と呼ばれる。また、貸出先の企業が倒産しても、銀行が倒産しない限り預金が減ることはない (ただし、現在はペイオフ解禁で1千万円まで元利保証しかなされない。企業にとっては、金融機関からの借入れには返済期限があり、会社は借入金の返済義務を負う。それゆえ、企業の観点からは負債と呼ばれる。

5.株式投資のリスクプレミアムに関する理論モデル-CAPM-

 動画では過去のデータから、株式投資収益率が金利より高くリスクプレミアムが存在することを示唆し、その理論については第3回研究会で取りあげると説明した。その概要は次の通りである。市場で最適な市場ポートフォリオが達成された状態を想定する。

《前提》;投資家により、上場全銘柄の投資収益率について期待値μおよび共分散行列{σij}が予想されている
 1)リスク分散の観点から全ての銘柄-市場ポートフォリオ-を保有することが望ましい<
 2)その時の市場ポートフォリオのリスクをμ,分散をσとする
 3)個別銘柄iの収益率と、市場ポートフォリオとの共分散をσmiとする
 4)σMi/σM=βiと置きベータ係数と呼ぶ
 5)μi=r+β(μ-r)ここで右辺の第2項がリスクプレミアムである。
 この式が資本資産評価モデル-CAPM:Capital Asset Pricing Model-と呼ばれ、株式投資のリスクプレミアムを説明する理論である。

以 上

 

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