JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

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2022コーポレートガバナンス研究会 第2回「会社法のガバナンス規整」

Q&Aセッション

Q01:① 3つ取締役会体制があり、各体制・委員会で、取締役や監査役の任期が決められていますが、再任することも一般的と思います。再任回数や期間について、制度面での制限や世界的な慣習、よいガバナンスとして研究領域などでベターと再任回数・期間はあるのでしょうか。

②日本では監査等委員会が増加傾向にありつつ、指名委員会等設置会社は60-70で頭打ちの状態である一方、3つの委員会(指名・報酬・監査)以外に、任意の委員会としてリスク委員会やサステナビリティ委員会を取締役会の諮問機関として設置する企業があります。これら委員会は、法律で定められたものではなく企業の”任意”で設置するものと思いますが、今後、取締役会サイドの委員会体制は、どのような潮流になっていくと思われますでしょうか。

A01:① 英米では年齢や性別で差別をしないというのが原則で、定年制や性別制限は法律で禁止されています。取締役についても同様ですから、有能であればいつまでもやってもらうというのが原則です。契約上任期はありますが再任の繰り返しについて制約がないのがふつうです。CEOについても同様です。アメリカでは10年以上在任しているCEOも珍しくないです。これらの背後には、取締役やCEOの業績評価を厳しく行うというビジネス慣行があるからです。したがって、業績を上げられないと取締役会が見切りを付ければ、就任したばかりのCEOでも数ヶ月で解任されてしまいます。各社は取引所の規則などでコーポレートガバナンスガイドラインを定め取締役の業績評価を制度化しています。業績評価において期待されている役割を果たしていると判断されれば再任が継続されます。日本では、社長にせよ取締役にせよ、きちんとした評価がされないというのが一般的慣行なので、定年が必要だと認識されているのだと思います。有能な人には年齢に関係ない貢献して欲しいので、日本は業績評価という慣行を確立すべきだと私は考えます。

②  日本では2003年に委員会等設置会社(現在の指名委員会等設置会社。以下単に委員会設置会社)が新設されましたが、これには社外取締役の設置が義務化されていました。日本の社長は、過半数の社外取締役を置かなければならない指名委員会や報酬委員会を嫌って、ご指摘の通り、委員会設置会社へと移行しようとしませんでした。アベノミクスのガバナンス改革の一環として、導入された第三の監査等委員会設定会社では社外取締役が必置でしたが2名でよく、しかも、指名や報酬に関しても株主総会で意見を述べることが出来るだけの権限しかないので、これなら何とかガマンできるということで600社以上が監査等委員会設置会社へと移行しました。移行したもう一つの理由は、監査役会設置会社に留まると、社外取締役をなぜ置かないかを説明する義務があるからです(これは結構面倒なことです)。しかし、2021年3月1日から監査役会設置会社においても社外取締役の設置が義務化されましたので、監査等委員会設置会社に移行する理由がなくなりました。日本ではこれからも監査委員会設置会社が主流であろうと推察しています。なお、監査役会設置会社でも任意(指名委員会設置会社のように法定のものでない)の指名委員会、報酬委員会を置くところが増えています。それは、指名委員会等設置会社の指名委員会、報酬委員会は法律上の規制が強いのでこれは避け、任意の委員会で自由にやりたいということだと思います。指名、報酬の機能をきちんと果たしてくれれば、それはそれで良いと私は考えます。スチュワードシップ・コードで株主としてのガバナンスを正しく行うように要請されている機関投資家にしっかり頑張ってほしいと思っています。(若杉 敬明)

 

《講義の捕捉》

わが国会社法の会社

まえがき

 2005年6月29日、「会社法」が国会で可決成立、2006年5月1日施行された。それまで、わが国には「会社法」と呼ばれる独立の法律がなく、会社法の役割を果たしていたのは、商法旧第2編会社、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法・監査特例法)等であった。これらが、統合、再編成され独立の会社法となった。1890年の商法公布以来の出来事であった。
 国際化・スピード化が進む経済・企業の実態に合うように、次のような事項を繁栄させることがその立法趣旨であった。
(1) 定款で定められる事項の拡大(定款自治)
(2) 会社形態の多様化
(3) M&Aに関する手続きの簡素化等々を進める。一方で
(4) 大会社に内部統制システムの概要の開示を求めるなど経営の透明化を図る

 本研究会の対象は、多くの国で経済の重要な部分を占める「株式会社」のコーポレートガバナンスである。株式会社の運営のあり方は会社法が定めている。以下の注1)にいる挙げられている特殊会社はすべて株式会社であり、会社法の株式会社の規定が適用される。しかし、会社法の株式会社は定款により業務を自由に決められるのに対して(定款自治)、特殊会社は、名称、目的、営業活動の範囲等が法律で定められており、その自由がない。特殊会社にもコーポレートガバナンスは不可欠であるが、特殊会社は営利が主たる目的ではないので、会社法の株式会社とは事業運営のあり方が異なり、ガバナンスの方法が異なる。その観点から、本研究会では会社法の株式会社のガバナンスを問題とする。

 会社法は、会社を営利目的の社団法人と規定して、株式会社という類型のもとの1社(株式会社)と持分会社という類型をのもとの3社(合名会社・合資会社・合同会社)あり方を規定している。株式会社の特徴を理解するために、最初に、わが国の標準的な会社法の教科書である神田『会社法』により4つの会社形態の概要を整理しておこう。(神田秀樹著『会社法 第二十四版』弘文堂2022年3月)。

1.事業と法形態

1-1 会社は事業を行うための法形態の1つである
 出資者が1人の事業を個人事業、出資者が複数の事業を共同事業と呼ぶが、会社は、共同事業形態の典型的なものである。共同事業は、多数の者からの出資を結合することにより大規模な事業を行うことを可能にする。
 出資者:資金を提供し、事業の活動によって生じる利益の帰属者となるものをいう。

1-2 出資者が所有者となる共同事業の法形態
 組合、匿名組合、信託、および会社がある。「出資者が所有者になる」ということは、出資者が事業の運営を支配することを意味する。そのような意味での出資者が存在しない形態または出資者が事業の所有者とならない形態として、一般社団法人や相互会社等がある。組合、匿名組合、信託については神田『会社法』1~3頁を参照のこと。

2.会社の概念
 「会社法」の会社は次のように、「法人性」「営利法人性」「社団性」という三つの特性を有している。その意味で「営利目的の社団法人」と呼ぶことができる。

2-1 法人性
 会社は法人とされる。法人格が認められることにより、団体自身の名において権利を有し義務を負うことが認められ、権利義務関係の処理が簡明になる。会社法は、法人格取得の要件を定め、その要件がみたされるときは、行政官庁の免許等の取得を問題としないで当然に法人格を認められる準則主義が適用される。

2-2 営利法人性
 会社は事業を行い、それによって得た利益を出資者である構成員に分配することを目的とする団体であって、その意味で営利法人である。一般社団法人や公益社団法人と異なり、構成員の私的利益をはかることを目的とし、利益の構成員への分配は剰余金の配当または残余財産の分配という形をとる。事業がどのような業種であるかは問題でないが事業は対外的に行われるものでなければならず、したがって相互保険会社や協同組合は会社法上の会社とはいえない。

2-3 社団性
 社団とは、組合に対する概念で、法的形式として、出資者である団体の構成員が相互に契約関係で結合する団体を組合、構成員が団体との間の社員関係により団体を通じて間接に結合する団体を社団と呼ぶ。組合では、構成員が契約によって結合するため、各構成員の権利義務は他の全構成員に対する権利義務の形をとり、各構成員は団体の財産上に共有権者として物権的持分を有する。これに対して社団では、各構成員の権利義務は社員の地位という団体に対する権利関係の内容となり、団体の財産は団体自身に帰属し、構成員は観念的を有するに過ぎない。団体の構成員間の関係を処理するためには、社団の方が組合より簡便であり、構成員が多数いる場合には、社団形式による処理が優れている。なお、会社には法人も出資できるので、法人も社員になれる。

3.会社の種類と類型

 会社法上においては、会社は株式会社と持分会社とに類型化される。株式会社の類型の中には株式会社1種類しかないが、持分会社の類型には合名会社、合資会社および合同会社という3種類の会社がある。株式会社と持分会社を分ける大きな相違点は、出資に際して出資者の権利義務を、株式という均一な単位に分割して付与するか、それとも持分という不均一な単位に付与するかにある。

3-1 株式会社
-株式会社の社員は株主と呼ばれ、株主は、株式についての払込みまたは給付という形で会社に出資する義務を負うだけで、会社債権者に対して何ら責任を負わない(有限責任)。
-業務執行と会社代表については、1株1議決権を原則とする株主総会で取締役を選任し、取締役が取締役会を構成し、代表取締役を選定し、代表取締役が業務を執行し会社を代表するという典型的な姿であるが、中小会社向けに簡素な機関設計も認められている。また、原則として、各種の意思決定および業務執行の監査・監督について複雑な規律が設けられている。
-株主の投下資本の回収は、原則として持分(株式)の譲渡による。

3-2 合名会社
-合名会社では、社員の全員が会社の債権者に対して無限の人的責任を負う。民法上の組合と異なり、合名会社の各社員は会社債務の全額について連帯責任を負う反面、債権者に会社資産から先ず弁済を受けるよう求めることができる。
-合名会社では、全社員がそれぞれ業務を執行し会社を代表するが、定款等で別段の定めをすることもできる。
-持分の譲渡も可能であるが、全社員の同意が必要である。投下資本の回収方法としては、持分譲渡のほかに、各社員は出資の払戻しを請求できる。また各社員は全社員の同意等により退社する。退社した社員は原則として持分の払い戻しを受ける。

3-3 合資会社
-合資会社では、無限責任社員と有限責任社員とがあり、前者、合名会社の社員と同じ責任を負い、後者は定款記載の出資の額までしか責任を負わない(有限責任)。
-各社員が無限責任社員か有限責任社員かは定款記載事項であり、有限責任社員の出資の目的・価額または評価の標準も定款記載事項である。
-合資会社における業務執行と会社代表は、合名会社と同様である。--持分の譲渡には、全社員の同意を必要とするのが原則であるが、業務を執行しない有限責任社員の持分の譲渡は、業務を執行する社員全員の同意があればできる。出資の払戻、退社および退社による持分の払戻しは、合名会社と同様である。

3-4 合同会社
-すべての社員が有限責任社員であり、定款記載の出資の額までしか責任を負わない。そこで、株式会社の場合と同様、会社法は全額出資規制を採用するほか、さまざまな会社債権者保護のための規律を設けている。
-業務執行と会社代表は、合名会社・合資会社の場合と同様である。
-持分の譲渡、出資の払戻し、退社および退社による持分の払戻しは、合資会社の有限責任社員と同様であるが、特則がある。

講義資料に関する注記

注1) 日本には社名に「会社」が付く企業は、①会社法の4会社(株式会社、合同会社、合名会社、合資会社)、②保険業法に基づいて設立される会社で、保険業を行うことを目的とする社団法人である「相互会社」、及び③特別法により名称、目的、営業活動の範囲が定められ設立される「特殊会社」の3カテゴリーに分類される。なお、特殊会社は3種類の法人から構成されるが、いずれも会社法の株式会社の規定が適用される。
特殊法人:日本法において、法人を設立する旨の具体的な法令の規定に基づいて設立される株式会社。日本電信電話株式会社、日本郵政株式会社、株式会社日本政策投資銀行など33株式会社(2022年4月1日現在)
認可法人:特別の法律に基づいて数を限定して設立され、かつその設立に関し行政官庁の認可を要する法人。株式会社地域経済活性化支援機構、株式会社産業革新投資機構等々の8官民ファンド
特別民間法人:民間の一定の事務・事業について公共上の見地からこれを確実に実施する法人を少なくとも一つ確保することを目的として設立された法人。東京中小企業投資育成株式会社等の3ベンチャーキャピタル

注2)「会社財産を危うくする罪」(資料 p.14)
会社法第963条は、1項~4項で不実申述や事実隠ぺいを禁止する一方,「会社財産を危うくする罪」(狭義)として,5項1号,5項2号,および(5項3号)を設けている。
会社法第963条
1項~4項 裁判所又は創立総会もしくは種類創立総会に対し、虚偽の申述を行い、又は事実を隠ぺいしたとき五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金
5項 第九百六十条第一項第三号から第七号までに掲げる者が,次のいずれかに該当する場合にも,第一項と同様とする。
1号 何人の名義をもってするかを問わず,株式会社の計算において不正にその株式を取得したとき(自己株式取得罪
2号 法令又は定款の規定に違反して,剰余金の配当をしたとき(違法配当罪;いわゆる蛸配当)
3号 株式会社の目的の範囲外において,投機取引のために株式会社の財産を処分したとき(目的範囲外投機取引罪

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