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2022 ファイナンス研究会 第6回 「株主価値創造のための投資の経済計算」

株主価値創造のための投資の経済計算の前提

1.ファイナンスにおける投資の考え方

1)ファイナンスとは資本(の提供者)の視点で株式会社という企業の活動を見る方法論である

2)株式会社は、株主の出資によって設立・運営される。出資とは自己資本を提供することであり。株式会社では、出資者は株主であり、株式会社の自己資本は株主資本とも呼ばれる。

3)株式会社は、営利つまり出資者である株主に会社の利益を分配することである。従って、株主の目的は、会社が資本を用いて事業を行うことにより、自己資本に対する利益を増加させ、自己資本の価値を増殖することであると考えるべきである。

4)ところで、自己資本には満期がないので、出資者である株主は、出資を回収するためには、株式を他者に譲渡しなければならない。そこでは株式の評価つまり株価の決定が前提である。なされる。

5)株式会社制度を採用する国では、株式の譲渡-流通-が円滑に行われるように株式市場を設置するとともに、健全な株価形成が行われるよう、ディスクロージャー制度などの諸施策が講じられている。

2.株主の株式価値つまり財産価値の増殖方法

6)株主は、株式市場で株式を購入し、ある期間保有して売却する。その間に受け取る配当と、売却したときの値上がり益が、株式投資がもたらす価値創造-株主価値創造-である。株主の財産を預かった経営者は、株主の期待に応えるために株式価値の増大に励まなければならない。株式価値の増大は、リスク見合った以上の高い収益性が期待できる投資を実行することによって実現される。それでは具体的にどのような方法で収益性を判断したら良いのであろうか。それが投資の経済計算の課題である。

3.投資の経済計算における投資とは?

7)製造業などの企業における実物投資の決定プロセスは、伝統的には資本予算Capital Budgetingと呼ばれる。設備や在庫の取得のために現在現金を支出し,将来(複数期間にわたり)、生産された製品の売上高により現金の収入を得てその中から利益を得るプロセスである。設備や在庫などの資産の取得には、当初大きな現金支出が必要である。その後、資産が産出する製品の販売により現金収入を得る。それらの現金の支出および収入をキャッシュフローという。以下では、支出は-(マイナス記号)、収入+(プラス記号)で区別され、必要に応じてキャッシュアウトフロー、キャッシュインフロート表現される。

8)キャッシュフローの側面から見れば、設備や在庫への投資は初期投資(現金支出)であり将来の売上高がもたらす利益は正味の現金収入である。従って、上に定義した者と同様に、企業の設備投資に代表される企業の投資も、現在の支出(キャッシュアウトフロー)と将来の収入(キャッシュインフロー)の交換にほかならない。

4.投資による価値創造を考察するためのフレームワーク

9)株式会社は、自己資本の他に負債を調達し、それらを資金として設備投資等を行い、事業を行って利益を実現する。なお、ファイナンスでは自己資本と負債を合わせて資本と呼ぶ。

10)調達する際は、自己資本と負債は異なる条件等で調達されるが、調達された資金には色がないので、企業においては、資本の全体が事業を行うための資金となる。

11)事業により販売収入を得るが、そこから種々の費用を支払った残り(利益)が資本(の提供者)の取り分である。

12)あらためて、定義しよう。資本の観点からの収入・支出をキャッシュフローと呼ぶ。投資家にとって、資本の提供がキャッシュアウトフローであり、事業によって得られる利益がキャッシュインフローである。総称してキャッシュフローとよびアウトかインかは±で区別する。

5.投資とキャッシュフロー

13)株式会社は株主価値創造を目指して投資を行う。

14)ここで投資とは、資本を調達し、それを資金源として資産等を取得して事業を行い、販売収入を実現することである。販売収入はさまざまなステークホルダーに分配される。販売収入のうち資本に帰属する分がキャッシュフローと呼ばれる。

15)キャッシュフローのうち減価償却費分は投下資金の回収であり、調達資本の返済に充てうるが、多くの場合、再投資される。その、基本にある思想が資本維持原則である。

16)投下資金回収後に残る部分が資本の利益である。資本利益は負債と自己資本とに分配される。利息 ⇨ 負債 利益 ⇨ 自己資本および政府

17)自己資本の利益には、法人税が課され政府の歳入に貢献する。

6.会計上の利益とキャッシュフロー

18)会計の第一の目的は株主に分配しうる利益-純利益-を計算することである。ファイナンスにおける利益概念つまりキャッシュフローによる利益は会計利益とは異なる。

19)会計上、純利益算出の過程でさまざまな利益が算出される ⇨ 売上総利益、営業利益、経常利益、税引き前・後純利益などである。

20)このうち、①税金+②当期純利益+③支払利息+④減価償却費をこれをネットキャッシュフローという。ここで、②+③ ⇨ 資本(自己資本+負債)の取り分であり、① ⇨ 政府の歳入 そして ④ ⇨ 投下資本の回収 (→資本に帰属)である。

21)ネットキャッシュフローから、成長-将来の当期純利益・支払利息の増加-を目指して行う投資額を引いた残りを、フリーキャッシュフローという(新規資本調達があれば加算)。経営者がその裁量で自由に使えるキャッシュフローという意味である。

7.投資のまとめ

22)投資の目的 ⇨企業の目的である株主価値創造を実現すること

23)資本の立場から見た投資の本質:「現在の現金」と「将来の現金」との交換であり、現在支出して、将来収入を得ることである。ここで重要なことは、現在と将来の間には時間が存在し時間はリスクをともなうので、それを以下に考慮するかである。

24)投資の経済計算とは、企業が新規に行おうとしている設備投資などの実物投資が、株主価値を創造するか否かを判断することであるということができる。本質は、現在の支出の価値と将来の入の価値との比較問題である。そこにおける基本課題は、「投資価値の判断において時間とリスクをどのように考慮するか」である。

 

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