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研究会ブログ
2021 コーポレートガバナンス研究会
第11回 ドイツのコーポレートガバナンス改革
Q&Aセッション


第11回講義の補足事項

Ⅰ ヨーロッパ大陸のコーポレートガバナンス改革概観

1.OECD(経済協力開発機構)のコーポレートガバナンス原則
1996年:OECD; 閣僚理事会の要請により、コーポレート・ガバナンスに関する経済諮問グループを設置
  –米欧日の6名のメンバーで構成された経済諮問グループは、経営実務家による討論集会などを経て、OECDに対し報告書を提出
1998年4月 OECDは、報告書を受けて特別プロジェクト・チームを設置し、原則の作成を命ずる
1999年5月 閣僚理事会でプロジェクト・チームの報告を承認
1999年「OECDコーポレート・ガバナンス原則」を発表
  -政府間組織の主導によって初めて作成されたコーポレート・ガバナンスに関する原則
  -拘束力はないが、各国政府や民間部門がベンチマークとして利用することを期待
2004年 OECD「改訂コーポレート・ガバナンス原則」
  -社会状況の変化に対応して内容を強化

2.フランスのコーポレートガバナンス改革
・フランスでは1980年代からコーポレートガバナンスに対する取り組みが始まり、英国と並行して、民間の自主的な取り組みが進められた
・取締役会会長とCEO が同一人であり、PDGとして大きな権力を握っていることがコーポレートガバナンス上の大きな問題であった
1995年 第一次ヴィエノ報告
  -社外取締役選出や取締役会における委員会等の設置についての提案
  -その後、CalPERSが策定したフランス企業に対するコーポレートガバナンス・コードがこれをポジティブに評価したことから、その実効性が高まる
1999年 第二次ヴィエノ報告
  –CEOと取締役会会長(PDG)の分離を主張

3.オランダのコーポレートガバナンス改革
・現代株式会社の始祖である東インド会社を生んだオランダは、ドイツと比較的類似する経営機構を有し、取締役会が存在することと、年金基金制度が発達していたこともあり、早くも1997年にはコーポレートガバナンス・ガイドラインが作成された(ペータース報告書)

4.ドイツのコーポレートガバナンス改革
・対照的にドイツでは、ガバナンス改革に関しては90年代後半まで目立った動きがなかった。その背景には取締役会と執行役会の分離という二層制の経営統治機構や銀行の強力なガバナンスの存在があった
1998年~2005年:シュレーダー政権のもとで資本市場改革やコーポレートガバナンス改革に着手された

Ⅱ ドイツに関する諸事項
1.共同決定法
 企業の意思決定への労働者の参加を定めたドイツの法律。沿革的には1920年の経営協議会法を先駆とするが、本格的なものとしては1951年の西ドイツ時代に、石炭・鉄鋼業についてモンタン共同決定法 Montan-Mitbestimmungsgesetz が制定され、役員の任免、投資・生産計画などについての最高の意思決定機関である取締役会の構成を労使同数とした。
  その他の業種については、取締役会への労働者の参加比率は3分の1とされていた(1952年経営組織法)が、1976年に新法が制定され、従業員2000人以上の民間企業において前記比率は2分の1になった。しかし、可否同数の場合、経営者代表が選出する議長に二重投票を認めるなど、完全な対等参加とはいえない。また、従業員が2、000人未満の企業では参加比率は3分の1のままである。    (日本大百科全書)

2.ユニバーサルバンク
 ユニバーサルバンクとは金融機関の形態のひとつで、商業的な業務と投資的な業務の双方を行う金融機関で、ひとつの金融機関が銀行機能に加えて、証券取引、保険の契約などが行える。ドイツやスイスなどのヨーロッパ圏ではこのユニバーサルバンクの形式が主流と言われている。金融機関側としては業務の効率化が図れるというメリットがあり、他方、顧客側としてもワンストップで多種多様なサービスを受けられるという利便性がある。

3.ドイツ・コーポレートガバナンス原則制定の経緯
①  1990年代に入ると、相次ぐ経営危機に端を発する世界的なコーポレートガバナンス改革の流れや海外投資家からの要請等から、ドイツにおいてもコーポレートガバナンス・コードの作成が検討された
② 2001年に産官学および労働組合からの代表からなる政府委員会が報告書を提出、それに基づき、2002 年 2 月に、ドイツ・コーポレートガバナンス・コード(German Corporate Governance Code)が公表された。その後も継続的に見直しが行われており、ほぼ毎年改訂版が公表されている。
③ バウムス報告者
証券取引の国際化等への対応のため、フランクフルト大学のバウムス教授を座長に、産学官および労働組合からの代表により構成されるバウムス委員会が組織され、コーポレートガバナンス・コードの策定を勧告する2001年バウムス報告書が公表された。
2002年 ドイツ・コーポレートガバナンス・コード制定
バウムス報告書に基づき、大手工業グループであるテュッセンクルップの取締役会会長であるゲルハルト・クロンメ氏を座長に、上場企業が従うべき コーポレートガバナンス・コードを策定するための政府委員会が設置された。その成果としてドイツ・コーポレートガバナンス・コード
Deutscher Corporate Governance Kodexが制定された。コードは、株主総会、監査役会、執行役会、情報開示、年次報告書等に関する原則が包括的に記載されている 

《参考文献》村 田 大 学「ドイツの監査役会制度と独立性改革の課題

 (若杉敬明)

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