【基本理念】
企業価値の持続的向上は、健全なコーポレートガバナンスによって支えられる。取締役は、会社に対する法的・受託者的責任を負うとともに、株主共同の利益および持続的な企業価値向上に対するガバナンス上の責任を負う。
第1章:基本概念と取締役会の責任
1.【コーポレートガバナンスとボードガバナンスの責任】
取締役会は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上のためのコーポレートガバナンス、およびそれを牽引する取締役会自身の運営(ボードガバナンス)の双方について責任を負う。
2.【取締役会の基本的役割】
CEOおよび経営陣は経営戦略案を策定し、取締役会はその形成過程に建設的に関与した上で承認し、その実行を監督する。
取締役会は、企業理念、戦略、リスク選好および行動規範と整合する企業文化が形成されているかを監督し、実態との不整合がある場合には経営陣に是正を求めるべきである。
3.【資本政策】
取締役会は資本コストを意識した資本配分を通じて企業価値の向上を図る。取締役会は、資本コストを上回る収益率の実現を目標として、投資、M&A、自己株式取得、配当政策など資本配分の基本方針を決定し、その成果を継続的に監督する。その目的は資本効率の改善を通じた持続的な企業価値創造にある。
4.【リスクガバナンス】
取締役会は、企業価値向上に必要なリスクテイクを支えるリスク管理体制を整備し、その有効性を継続的に監督する。
取締役会は、重大な危機に対する企業のレジリエンスおよび事業継続能力を定期的に検証すべきである。
5.【取締役会文化】
取締役会は、会長(またはLID)のリーダーシップの下、自由闊達で建設的な議論を行い、異なる意見を尊重する文化を形成しなければならない。
6.【取締役会会長のリーダーシップ】
取締役会会長(または筆頭独立取締役)は、取締役会が実効的に機能するための運営を主導する。
7.【株主との建設的な対話】
株主との対話は、単に株主の要求に応えるためではなく、企業価値の持続的向上という共通の目的を実現するために行われる。
8.【取締役会の情報開示】
取締役会は、適時かつ透明な情報開示を通じ、市場との信頼関係を維持する。
9.【受託者責任とアカウンタビリティーの貫徹】
取締役および業務執行役員は、会社および株主に対する受託者責任を深く認識しなければならない。また、取締役会は、最高経営責任者(以下、CEO)をはじめとする経営陣に対し、厳格なアカウンタビリティーを求める。ここでのアカウンタビリティーとは、単なる事後的な説明責任にとどまらず、目標の達成度合いに応じた信賞必罰を含む「結果責任」を意味する。
10.【ESGとサステナビリティの統合】
取締役会は、従来の財務的指標による営利の追求にとどまらず、ESG(環境・社会・ガバナンス)等に関する新しい課題をコーポレートガバナンスの重要事項として位置づけ、その基本方針の決定と監視に関与する。
11.【AIガバナンス】
取締役会はAIを含むデジタル技術について、その利用方針、倫理、安全性、透明性およびリスク管理を監督する。
第2章 監督と執行の分業体制
12.【ガバナンスとマネジメントの分離】
取締役会は、経営戦略その他の重要事項の審議・承認および経営陣の監督を中核的役割とし、日常的な業務執行はCEOが率いる経営陣に委ねる。
13.【CEOの権限と責任】
CEOは自らの進退をかけて業績を追求し、全てのステークホルダーにとって最善となる効果的・効率的・倫理的な経営体制(マネジメント・システム)を構築する。また、資本主義の大原則である公正な市場原理を遵守し、コンプライアンス経営を忠実に実行する結果責任を負う。
14.【CEOのインセンティブ】
取締役会はCEOに企業価値向上への適切なインセンティブを与える。
第3章:ボードガバナンスの構造と中核機能
15.【取締役会規則】
取締役会は、その目的、権限、責務、構成、運営方法および評価手続を定めた取締役会規則(Board Charter)を策定し、定期的に見直すべきである。また、透明性を高める観点から、その主要な内容を公表することが望ましい。
16.【独立性と多様性を備えた取締役会】
取締役会は、経営監督を実効化するため、独立取締役としての社外取締役を中心に構成される。同時に、CEOが提案する多様な事業機会を理解し意思決定を下すために、取締役会はスキル、コンピテンシー、性別、国籍、職業経験等の面で高度な多様性を確保しなければならない。
17.【独立取締役】
独立取締役は、株主共同の利益を踏まえて、客観的な判断を行う。
18.【三委員会による監督機能(指名・報酬・監査)】
取締役会は、ガバナンスの基本機能を担保するため、独立取締役を構成員とする指名委員会、報酬委員会、および監査委員会を設置する。
各委員会は、その目的、権限、責務、構成および運営方法を定めた委員会規則(Committee Charter)を策定し、取締役会の承認を受ける。委員会規則は取締役会規則と整合していなければならない。
各委員会は毎年自己評価を行い、その結果を取締役会に報告するとともに、必要な改善措置を講じる。
19.【CEOの指名と後継者育成(指名委員会)】
指名委員会は、会社の長期戦略との整合性を検証しつつ、将来のCEOに関する後継者育成計画を立案し、その実行を取締役会の監視下で進める。
20.【業績連動報酬と信賞必罰(報酬委員会)】
報酬委員会は、CEO等の業務執行役員を最良のマネジメントに向けて動機付けるため、業績目標を埋め込んだインセンティブ報酬(業績連動報酬等)を制度化する。業績評価と報酬制度を厳密に連携させ、結果責任(アカウンタビリティー)に基づく信賞必罰を断行する。結果責任の評価に際しては、経営陣の意思決定、管理可能性および実質的貢献を適切に識別する。
21.【リスクおよび内部統制の監査(監査委員会)】
監査委員会は、企業価値創出のための適切なリスクテイキングがなされているかを監視するとともに、内部監査および外部監査人との適切な連携を図り、財務報告やコンプライアンスを含む内部統制システムが整備・運用されているかを評価し、取締役会に報告する。
第4章:取締役の責務と取締役会の実効性評価
22.【取締役の職務遂行と研鑽】
取締役は、業務の意思決定および経営監督の責任を全うするため、会社の事業や財務戦略の理解に時間と労力を惜しんではならない。必要に応じて外部専門家へ助言を求め、議論に向けた十分な準備を行う。
23.【取締役会の自己評価(実効性評価)】
取締役会は、自らのボードガバナンス機能が実効的に働いているかを確認し、自己革新を図るために定期的な自己評価(実効性評価)を実施する。この評価は、機密性が高く複雑な内部調整を要するため、取締役会会長(または筆頭独立取締役)の強いリーダーシップの下で行われ、必要に応じてガバナンス実務の修正に繋げる。
24.【継続的改善】
取締役会は、ガバナンスを固定的な制度として捉えるのではなく、経営環境、市場環境および社会的要請の変化に応じて不断に見直し、継続的に改善する。

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