JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

コラム

米国株式会社の内部監査人

Q:Chat GPTに質問しました。「米国の内部監査人はどのようなバックグラウンドを持つ人が多いですか。また会社の中ではどのようなキャリアを辿りますか?会社間の移動は多いですか?」(若杉敬明)

Chat GPTのAnswer:はい。米国の内部監査人は、日本に比べて「内部監査を一つの専門職としてキャリアを形成する人」が多いのが大きな特徴です。ただし、全員が監査一筋というわけではなく、近年はむしろ多様なバックグラウンドが重視されています。

1.どのようなバックグラウンドが多いか
伝統的には、会計・財務・外部監査が最も典型的です。大学で会計学を学び、Big Fourなどの会計事務所で外部監査を経験してから企業の内部監査へ移る経路も一般的です。IIAの2024年調査では、新卒採用で企業が求める専攻は会計80%、監査53%、ビジネス44%が多い一方、コンピューター科学・ITも43%に達しています。
現在では、これに加えてIT・サイバーセキュリティ、リスク管理、コンプライアンス、データ分析、業務部門などの経験者が増えています。IIAも、operations、IT、compliance、financeなどの経験が内部監査能力へ転用できることを明確にしています。
資格では、代表的なのがCIA(Certified Internal Auditor)、CPA(公認会計士)、IT監査のCISA、リスク管理のCRMAなどです。2022年のIIA北米調査では、内部監査責任者層の60%がCIA、55%がCPAを保有していました。

2.会社の中ではどのようなキャリアを歩むか
大きく二つのタイプがあります。
第一は、内部監査の専門家として上がっていくタイプです。
Staff Auditor → Senior Auditor → Audit Manager → Director → Chief Audit Executive(CAE)
という流れです。CAEになる人には内部監査経験が長い人が多く、IIAの北米調査では、内部監査リーダーの80%以上が10年以上の内部監査経験を持っていました。
第二は、内部監査を経営人材育成の場として経験するタイプです。
たとえば、
財務・営業・IT・事業部門 → 内部監査 → 財務・リスク管理・事業部門の管理職
という動きです。
これは米国企業の内部監査を理解するうえで重要です。内部監査に入ると会社全体を横断して、事業、財務、内部統制、リスク、経営陣、取締役会を見ることができます。そのため、内部監査部門を**「将来の経営幹部を育てる場」**として利用する企業があります。IIAも、他部門から内部監査へ人材を入れる「inbound rotation」と、内部監査から他の事業部門へ送り出す「outbound rotation」の双方を正式な人材管理手法として紹介しています。
したがって米国の内部監査部門には、
「監査のプロとして残る人」
と
「内部監査で会社全体を学んだ後、事業部門へ出ていく人」
が共存しています。

3.会社を変わる内部監査人は多いか
ご質問の核心はここだと思います。
日本と比較すれば、米国では会社をまたいでキャリアを形成する内部監査人はかなり普通です。
たとえば、
Big Four → A社内部監査 → B社Audit Manager → C社CAE
というキャリアは珍しくありません。IIAの現在の幹部プロフィールにも、複数企業で内部監査の管理職を経験している人が普通に見られます。たとえばIIAのAdnan Rahim氏は、Metaの内部監査幹部になる以前にVisa、Texas Capital、Amazonなどで同種の職務を経験しています。
これは、内部監査人の専門能力が会社固有ではなく、他社でも通用しやすいからです。
CIA、CPA、CISAなどの資格、IIAのGlobal Internal Audit Standards、SOX、リスク管理、内部統制、監査手法などには共通性があります。そのため、
「A社に30年勤めた人が最後に内部監査部長になる」
という日本企業で伝統的に見られたキャリアとはかなり違います。
もっとも、会社間移動の正確な比率を示す最新の包括的統計は見当たりません。ただ、2025年IIA北米調査では、内部監査部門の68%が過去1年間に採用活動を行い、55%が既存ポジションの欠員補充を行っていました。これは転職だけを意味する数字ではありませんが、人材の出入りがかなりあることを示しています。

4.日本との異同
したがって、日本との違いを一言でいうと

米国では内部監査人を、
「会社の中でたまたま内部監査部へ配属された人」
というより、
「監査・リスク・内部統制について専門能力を持つプロフェッショナル」
として見る傾向が強いといえます。
その結果、キャリアは必ずしも一社の中で完結しません。一方で最近は、内部監査の専門家だけでは十分でないため、事業部門の人材を内部監査へ入れ、数年間経験させて再び事業へ戻すローテーションも重視されています。IIAの実務指針もこの二方向の人材移動を推奨可能なモデルとして扱っています。

ですから米国の内部監査部門は、かなり特徴的な二つの人材が混在する組織だと考えると分かりやすいです。すなわち、①内部監査を生涯の専門職とする人と、②内部監査を数年間経験して経営・事業部門へ進む人です。
この違いは、以前ご相談いただいた「日本の内部監査責任者が経営側におもねらず独立性を保つにはどうすればよいか」という問題にも直結します。米国で内部監査人の専門職としての労働市場が存在することは、「今の会社の経営陣に嫌われたらキャリアが終わる」という依存関係を相対的に弱める効果がある、と私は考えます。

(若杉敬明 2026/10/02)

 

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