JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

コラム

SDGsをめぐって-その2:責任投資原則ESGとSDGs-

GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、2015年9月28日にPRI(責任投資原則)に署名した。GPIFは次のように述べている。「ESGという言葉が知られるようになったのは、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI、Principles for Responsible Investment)を提唱したことがきっかけです。2008年のリーマン・ショック後に資本市場で短期的な利益追求に対する批判が高まったこともPRIの署名機関増加につながり、2019年3月末時点で2400近い年金基金や運用会社などがPRIに署名しています。このうち年金基金などアセットオーナーの署名は432にのぼり、その運用資産残高の合計は20兆ドル以上(約2200兆円)に達しました。
ESG投資に似た概念としては、社会的責任投資(SRI、Socially Responsible Investment)という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。定義の違いについては様々な説明の仕方がありますが、SRIがまずは倫理的な価値観を重視することが多いとされるのに対し、ESG投資は長期的にリスク調整後のリターンを改善する効果があるとされています。このためGPIFにとってのESG投資は、「年金事業の運営の安定に資するよう、専ら被保険者の利益のため、長期的な観点から、年金財政上必要な利回りを最低限のリスクで確保することを目標とする」というGPIFの投資原則に沿い、受託者責任を果たすことができる投資手法であると考えています。」
国連が提案するESGが長期的な投資を行う機関投資家の投資原則として認められつつあるところに、新たに国連がSDGsを発表した。両者にはどのような関係にあるのであろうか。世界の解決すべき課題を環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの観点から考えようというのがESG投資である。そこにSDGsという普遍的あるいは先進国も途上国も抱えている問題が提起された。その問題を解決するためには国レベルの公的な活動でなければできないことも多いが、私的な企業が事業としてできることが多数含まれている。持続可能な世界の実現は営利を目的とする私企業によっても支えられている。資本の観点から言えば、SDGsの世界は事業機会に溢れている。先読みをする投資家がSDGsの実現を加速しようとしていると言える。
世界全体でみるとESG投資は2500兆円を超えていると言われる。これだけの金額がすでに持続可能な世界や社会に貢献する企業に投資されている、ということである。日本では2016年5月20日に安倍総理が本部長、すべての国務大臣がメンバーになり、第1回「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部会合」が開催された。それ以降も毎年2回同じメンバーで開催されていて、その過程で日本はSDGsに関わることが決定されている。
2回目の会合で日本が関わるSDGsの内容が明らかにされた。
「持続可能な開発目標(SDGs)の実施指針を本日決定しました。日本は、これまで、持続可能な経済・社会づくりのため、国際社会のモデルとなるような優れた実績を積み重ねてきています。
今回決定した指針には、経済、社会、環境の分野における8つの優先課題と140の施策を盛り込みました。この指針で、世界に範を示し、持続可能な世界に向けて、国内実施と国際協力の両面で国際社会をリードしてまいります。
一点目は、国際保健の推進です。国際保健機関に対し、総額約4億ドルの支援を行う予定です。
二点目は、難民問題への対応です。今般、新たに5億ドル規模の支援を行います。
三点目は、『女性の輝く社会』の実現です。2018年までに総額約30億ドル以上の取組を行います。
来年7月には、国連で我が国の取組の報告も行う予定です。関係閣僚においては、今後も本実施指針の下、緊密に連携し、政府一丸で取り組むようお願いします。」
日本政府は、SDGs関連に9億ドルの支援、30億ドルの予算をつぎ込むことを決めた。つまり日本円にして合計約4000億円を投資すると言っている。これは企業の事業機会を生み、そのことはそれだけの投資が必要であることを意味している。投資家にとってこれ以上のチャンスはないと言えよう。SDGsに関して政府主導でいろいろな取り組みが行われています。次回は、2019年年初に発表した「SDGsアクションプラン2019」に沿って代表的な取り組みを見てみよう。

若杉敬明

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