JCGR 日本コーポレートガバナンス研究所

コラム

日本企業はなぜ駄目になったのか-ROE、株価そしてガバナンス-

日本経営財務研究学会 第38回全国大会 統一論題報告(2014年10月5日)

『アベノミクスとコーポレート・ガバナンス-日本企業はなぜ駄目になったのか-『』

ミシガン大学ロス・ビジネススクール 三井生命金融研究センター

理事 若杉敬明

「アベノミクスが失敗したら日本の明日はない」というのが世界的な日本観である。「バブル崩壊後、抜本的な解決策を見いだせない内閣が次々と政権を担当してきたが、ようやく毛色の変わった行動的な内閣が登場した。これに期待しよう」ということで、世界が注目している。リフレ政策をナイーブに受け入れるなど、問題が多く危なっかしい面もある。しかし、今が日本にとってラスト・チャンスである。アベノミクスに対する賛否、批判はともかく、これを契機に日本の改革を実現しなければならない。

アベノミクスの第一の矢、第二の矢は変革のムード作りが目的であり、極論すれば安倍内閣は新しいことをやるのだというシグナルであった。言うまでもなく本命は第三の矢、「成長戦略」である。その本質は、企業が新しい事業機会にチャレンジするための①環境作り、②予算などのお膳立て、あるいは③ヒント集である。したがって、「成長戦略」の成功は、もっぱら企業がこれを契機にいかに新規事業を推し進めるかにかかっている。事業にはリスクが伴うので、積極的にリスクをとり、新しい事業機会にチャレンジする経営者の企業家精神が「企業戦略」のKSFである。しかし、日本の企業経営の現状を考えると、アベノミクスの前途について悲観的にならざるをえない。現在の日本経営にはどのような問題があるのであろうか。これを考えることにより、逆に「日本企業がなぜ駄目になったか」の一面が見えてくるのではないだろうか。

本報告においては、アベノミクスの契機となった、世界経済における日本経済の地位低下の現状をごく簡単に概観した後、アベノミクスの概略を紹介する。その後、日本企業の経営に対して体験的私見を述べ、現在の環境の下では日本企業の経営を変える必要があることを説く。そのためにはガバナンス改革が不可欠である。その点、これまでの内閣以上にガバナンス改革を強調している安倍内閣に期待が持てる。しかし、これまでのわが国のガバナンス改革は表面的であり本質に関する内実はともなっていないことを指摘し、アベノミクスに期待すべきガバナンス改革を提示する。

「日本企業はなぜ駄目になったのか」という統一論題に対する答は、グローバル競争のもとで欠点だらけの経営を放置していた日本のガバナンスであるということである。

1.日本経済の現状

1.1 世界の中の日本

1980年代、日本はジャパン・アズ・ナンバーワンと誉めそやされたが、現在はどうであろうか。

まずGDP(名目)で見ると1980年には米国に続き世界で2位であったものが、2013年にはEUROを除くと,中国さらにインドの後塵を拝し4位である。しかし、GDPは総額であるから人口の大きな国が上位に来る傾向がある。そこで、一人当たりのGDP(名目)で見ると、世界における日本の地位はまったく違った様相を見せる。1980年は22位であったものが2013年には36位に下がっている。GDPで世界4位という状態に比べるとかなり見劣りがする。

国によって貨幣の価値は異なる。GDPは小さくても、物価が安ければ実質的なGDPは大きいことになる。購買力平価換算(PPP)のGDPで見ると、1980年には2位であったが、2013年になると、中国およびインドに抜かれて4位である(図1)。他方、購買力平価換算の一人あたりGDPでみると(図2)、1980年に24位であったものが 2013年には38位に下がっており、日本の地位低下が著しい(1)

  注1)CIA -The World Fact Book、2013

https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/rankorder/rankorderguide.html

1.2 日本の経済、国家財政および企業業績

1.2.1 GDPの水準

図3はG7各国の、1990年と2014年のGDP(ドル表示の名目)を比較したものである。日本のGDPはこの四半世紀で約1.6倍になった(ただし、1990年代半ばからは横ばいである)。カナダは約3倍、アメリカ2.9倍、ドイツ2.5倍、フランス2.3倍、イギリス1.9倍、イタリア1.9倍である。単純にこれらの国のGDPを合計すると、日本以外のG7は2.7倍になっている。それに対して、日本は1.6倍であるから、相対的に言えば、日本以外のG7を1としたとき、日本は半分とは言わないまでも0.6に縮んだことになる。

1.2.2 国家財政

今さら言うまでもないが、日本の国家財政は危機的な状況である。歳出のうち税収は約半分に過ぎず、他は国債によって賄われている。国債の発行残高はG7の中で最悪であり、世間を騒がせたギリシャやスペインよりも悪い。税収と国債発行残高等(約1000兆円)との比較の上では、国家財政は事実上破綻していると言っても過言ではない。長年のデフレで経済が縮んでおり、税収が歳出に追いつかない状態が長く続いている経済を活性化しGDPを成長させないと日本の明日がないことは誰の目にも明かである。

ちなみに、GDPに対する国の債務残高の比率(%)は、日本231.9、米国106.3、英国110.0、ドイツ83.4、フランス115.8、イタリア146.7、カナダ97.1である2

  注2)財務省ウエブサイトよりhttp://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/007.htm

2014年の日本の財政-予算-

歳入                                 歳出

税収   50.0兆円           政策経費              72.6兆円

税外収入  4.6兆円           国債費             23.4兆円

新規国債 41.2兆円           総額           95.8兆円

1.2.3 日本の株価とROA・ROE

GDPとは一国内の全企業が生み出した付加価値の合計であるから、上に見た日本のGDPの背景には企業業績がある。ここでは、ファンダメンタルズである企業業績と、その分配の場である株式市場のパーフォーマンスを概観しよう。

先ず企業業績の実績を見てみよう。資本の観点からの業績指標であるROAおよびROEは図4の通りである3

図4 ROAおよびROE(略)

  注3)財務省の法人企業統計年報により計算したものである。

http://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/hyou07.htm

このグラフは1980年以降であるが、日本が電気製品や自動車でアメリカ市場を席巻し空前の繁栄を謳歌していた1980年代から、日本企業の資本収益性は低下傾向にあるのである。豊かな利益により(あるいはグローバリゼーションによるビジネス・リスクの城主を恐れ?)自己資本比率が上昇したために、ROEの落ち込みはさらに激しい。

アメリカのサブプライム景気や中国のオリンピック景気により輸出が好調で、リーマン・ショックの直前ROAもROEも上昇したが、その後再び低下している。

過去30年間の日米欧の株価の動向は(図4)の通りである。アメリカの株価(S&P500)が30年前の約10倍、ヨーロッパの株価(FTSE100)は30年前の株価の約7倍であるのに対して、日本の株価(日経平均225)はほぼ30年前の水準である。リーマン・ショック後30年前の水準で停滞していたが、アベノミクス登場で50%近く上昇したが、それでも80年代半ばの株価水準に留まっている。

1980年代、株価は上昇を続けたが、1980年末をピークに、1990年の年明けとともに、循環的な上下はあるものの傾向的にはほぼ一貫して低下している。80年代の株価上昇はまさにバブルだったのであろうか。いずれにせよ、1990年以降はまさに失われた30年と言わざるをえないであろう。

株価は企業の将来の予想収益力によって決まる。企業の収益力予想が悪い方に改訂されればその時は株価が下がるが、再び悪い方に改訂されなければ株価は下落しない。むしろ、投資家が期待する要求収益率を満足するように株価は上昇する(ただし、企業が内部留保により収益性が資本コストを上回る投資を実行する限りは)。1990年以降の日本の株価のように、(循環的な上昇はあるものの)傾向的に株価が下がっているというとは、日本の(上場)企業が全体として投資家の期待を裏切り続け、予想の悪い方への改訂を迫っているということである。投資家が企業経営に対する期待を失い続けている、期待を引き下げ続けているということにほかならない。

  図4 欧米日の株価(略)

2.アベノミクスとは

2.1 アベノミクスの目的

 1990年以降の日本経済は、物価上昇はなかったものの、国民の実質的な所得は増加せず、国内消費は停滞し、経済は中・米等への輸出に依存してきた。その結果、日本の経済は輸出国の経済に左右される不安定な状態であった。雇用も非正規社員に頼る不健全な状態であった。この状態から抜け出そうというのが、いわゆるアベノミクスの目的である。つまり、デフレ脱却を果たし、経済成長と雇用確保の実現を目指している。

経済成長とは国民が生み出した価値であるGDPの増加をいう。GDP とは国内のすべての企業の付加価値の合計であり、この付加価値から減価償却を控除した額が純付加価値である。純付加価値が労働と資本とに分配され、賃金と資本所得(金利+利益)という形で所得を創出する。経済成長を遂げるためには、付加価値生産性が高い投資を継続的に実行していかなければならない

減価償却や内部留保等で投資を実行し、事業を拡大していけば雇用も確保される。しかし、現状はデフレ下で投資が停滞している。その意味では、アベノミクスの成功は企業の投資意欲向上にかかっている。

2.2 アベノミクスのロジック

アベノミクス登場前は、日本経済は物価下落と賃金低下で悪性のデフレ・スパイラルに陥っていた。三本の矢によりデフレ脱却を目指すのがアベノミクスである。

第一の矢と第二の矢は、大胆な貨幣供給と積極的な財政出動により、で政策変化のシグナルを発信し、国民に節約ムードから消費ムードへとセンチメントの切り替えを促すことを目的としている。豊富な貨幣供給は、ファンド等が海外投資をしやすくする。資金の流出は円安を導き、輸出を助けることになる。その結果、輸出企業の業績を伸ばし、株価を引き上げる。他方、大型の財政出動は需要を創出する。企業は需要増に応じて設備投資を行う。これらの需要増により企業業績が改善されれば、賃金が引き上げられ、その結果消費が拡大し価格が上昇する。それがさらに企業業績の向上にフィードバックされる。このようにして、デフレからの脱出とGDPの成長が達せされる。これがアベノミクスの狙いである。

2.3 アベノミクスの成長戦略

第一の矢、第二の矢が需要サイドに働きかけ、景気を一時的に刺激し、国民に心理の切り替えを迫るのに対して、第三の矢は供給サイドつまり企業に働きかける政策である。企業や国民の自身を回復し、期待を行動に欠けることを目指している。これをアベノミクスは成長戦略(成長のための戦略)と称し、そのために日本を再活性化させるための諸方策として日本再興戦略を提示する。

換言すれば、利益機会を探求しその実現にチャレンジしようとする民間企業に対し、国があらゆる手段を用いて支援することにより、わが国の経済成長を実現することを狙いとしている。そして、民間投資を喚起する成長戦略として三つのアクション・プラン、すなわち日本産業再興プラン、戦略市場創造プラン、国際展開戦略を提示している。第一の日本産業再興プラントは、グローバル競争に打ち勝つために企業の再編を促す戦略である。今後5年間を「緊急構造改革期間」と定めるとともに、とくに最初の3年間を「集中投資促進期間」と位置付け、民間投資の拡大とともに構造改革などを促すものである。第二の戦略市場創造プランとは、新たな成長分野を切り拓く産業を開拓することを目的として、2030年のあるべき社会像を見据え、その実現のために、政策資源を集中投入するロードマップを策定したものである。

日本が国際的強みを持つ分野として4つのテーマが選定されている。第三の国際展開戦略とは、グローバル化の推進を目指し、日本の産業の世界市場展開や海外からの対内直接投資拡大等を促進する諸政策をいう。①貿易の拡大・経済連携の推進、TPP(環太平洋パートナーシップ)交渉参加、日中韓・日EU等のFTAの推進等の通商に関する枠組み作りおよび②輸出・交流の活発化を目的とした国際展開の推進つまり、首相のトップセールスを背景とした国際競争力強化による新興国へのインフラ輸出の推進、ビザ発給要件の緩和、そしてクールジャパンの推進等である。

三つのプランの具体的な内容については何回か改定されているが、以下に引用するのは2014年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂 2014 -未来への挑戦-に示された主要項目である。

一.日本産業再興プラン

1.緊急構造改革プログラム(産業の新陳代謝の促進)

2.雇用制度改革・人材力の強化

2-1.失業なき労働移動の実現/マッチング機能の強化/多様な働き方

2-2.女性の活躍推進/若者・高齢者等の活躍推進/外国人材の活用

2-3.大学改革/グローバル化等に対応する人材力の強化

3.科学技術イノベーションの推進/世界最高の知財立国

4.世界最高水準の IT 社会の実現

5.立地競争力の更なる強化・・・・・・・・・・・・・・・・・・65

5-1.「国家戦略特区」の実現/公共施設等運営権等の民間開放(PPP/PFI の活用拡大)、空港・港湾など産業インフラの整備/都市の競争力の向上

5-2金融・資本市場の活性化、公的・準公的資金の運用等

5-3.環境・エネルギー制約の克服

6.地域活性化・地域構造改革の実現/中堅企業・中小企業・小規模事業者の革新

二.戦略市場創造プラン

テーマ1:国民の「健康寿命」の延伸

テーマ2:クリーン・経済的なエネルギー需給の実現

テーマ3:安全・便利で経済的な次世代インフラの構築

テーマ4:世界を惹きつける地域資源で稼ぐ地域社会の実現

4-① 世界に冠たる高品質な農林水産物・食品を生み出す豊かな農山漁村社会

4-② 観光資源等のポテンシャルを活かし、世界の多くの人々を地域に呼び込む社会

三.国際展開戦略

①対内直接投資残高倍増の推進体制強化

②新たな政府横断的クールジャパン推進体制の構築

③新興国戦略の深化

 

2.4 アベノミクス、第一の矢・第二の矢に対する評価

最近のBloomberg(2014年8月29日)は次のように伝えている(4)。「7月の国内経済指標はアベノミクス効果の息切れが鮮明となり軒並み軟調な数字を示した。全国消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI )は前年比で3.3%上昇と14カ月連続でプラスとなったものの伸び率は前月と同じだった。家計消費支出は消費税率が8%に引き上げられた4月から4カ月連続でマイナスとなったほか、前月急落していた反動が予想されていた鉱工業生産指数でも前月比伸び率が市場予想を下回った。

  注4)http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NB1QYX6TTDS901.html

アベノミクス以降、第一の矢の効果により物価が上昇しているように見えるが、円安による食料品・エネルギーの高騰であり、本来の狙いである需要の増加によって上昇しているわけではない。

また、株価も上昇したが、円安効果による輸出企業の業績改善によるものであり、輸出企業以外は円安によるコスト上昇で業績は苦しい。一方で、株を保有する富裕層の消費は拡大したと言われているが、その後の株価は踊り場状態であることと、消費税の引き上げで、消費は停滞気味である。

アベノミクス以降の円安はほんとうにアベノミクス効果によるものであろうか。21世紀に入った頃から、日本が低金利であるために投機目的での円借りが進行し円安が進んだ。しかし、リーマン・ショック後、その資金の環流と各国の金融緩和政策による余剰資金の流入により円高が進んでいた。しかし、東北大震災を契機として、原発の停止により原油の輸入や医薬品分野の輸入等が増大したことから、貿易収支の赤字が増加し、ひいては資本収支の黒字を食い潰し、経常収支が急速に悪化した。そのせいで円安が進んだというのが共通の理解であると思われる。これでは決して第一の矢の成果とは言えない。しかし、アベノミクスにとっては幸運なことに、円安により輸出企業の業績が好転し株式市場が活性化したのである。

第二の矢として10兆円規模の公共投資中心の財政政策が実施された。しかし、震災にともなう復興需要と相まって、労働力不足から人件費が高騰し、かつ資材費も高騰しており、輸出企業とは対照的にゼネコンなどの業績は悪化している。中小企業も同様である。事業機会はあるがいわば完全雇用状態で、企業は金縛りに遭っている。東京オリンピックは経済活性化の絶好の契機であるが、現実には実行可能な事業機会になっていない。

第一の矢および第二の矢が成果を上げているかと問われれば、①企業の国内設備投資は増えていない、②国内消費も増えていない、そして③輸出金額は増加しても輸出数量は増えていない等の理由で、少なくとも期待通りの効果を発揮していないと言わざるをえない。残る期待は、第三の矢である成長戦略であるが、その成果はこれからである。

2.5 本命「成長戦略」のKSF

 第三の矢である『成長戦略』は、上述のように、民間の設備投資を喚起するための①環境作り、②予算などによるお膳立て、あるいは③ヒントである。第三の矢を放つだけでは、仮に「第三の矢としての成長戦略」は成功しても日本は成長しない。政府が提供する環境や政府が示唆する分野を捉えて、積極的に事業を拡大しようとする企業の意欲がなければ、第三の矢は、日本を再び成長軌道に載せることはできない。

企業成長に向けて企業を導くのは、次のような経営者の属性である。

  • 経営者のチャレンジ精神(リスク・テーキング)
  • 経営者のリーダーシップ、
  • 経営理念、ビジョンから戦略を立案する能力
  • 戦略を事業計画化する能力
  • 事業計画を実現する経営スキル等

これらはまさに現代の経営者に要求される経営能力であり、現代企業のマネジメントそのものである。残念ながら、現代の日本の経営者の多くはこれらを持ち合わせていないようにみえる。少なくともそれをうかがわせるマネジメントが広く行われているとは言いがたい。経営者から良質の経営を引き出すのがコーポレート・ガバナンスの役割であることを考えると、わが国のコーポレート・ガバナンスにも問題があると考えざるをえない。

 第二次大戦後、日本が目覚ましい経済成長を遂げ、アメリカに次ぐ経済大国になったのは、国民の復興を目指す精神とともに、企業経営者が健全な企業家精神を持っていたことによるものと言われている。なぜ今それが失われているのか。それを蘇らせるにはどうしたらよいのであろうか。この問題に対する洞察なしには、アベノミクスの成長戦略の成功はありえない。

3.わが国の企業経営の現状

3.1 はじめに-共通な制度としての資本主義と株式会社-

資本主義とは、一般に①自由経済とその下で働く競争原理、②競争にもとづく市場原理、③営利を目的とする民間企業による経済の運営、および④私有財産制度の下で出資者によつ企業の私有、等を特徴とする経済制度である。もちろん、人間が作る制度であるからそれぞれの国の歴史や文化によってさまざまなバリエーションがある。株式会社とは、株式平等原則のもとで均等な内容を持つ株式という権利と引き替えに出資を受ける企業形態で、①法人格、②出資者の有限責任、③株式の自由譲渡性、④所有と業務執行の分離、および⑤株主による所有を共通の特徴とする世界的な制度である(5)

  注5)若杉敬明『新版入門ファイナンス』中央経済社2011年 第2章「資本主義と株式会社制度」

このように、資本主義においては、出資者が企業の所有者であり、出資者が所有に基づいて会社に対する支配権(ガバナンス、コントロール)を有する。株式会社においては株主が出資者であるから、株主が会社の所有者であり、株主が会社を支配できる。ここで支配とは、(a)会社を自ら経営すること、あるいは(b)他者に経営を委ねることである。多数の株主の存在を前提とする株式会社制度においては、後者の(b)が採用され、株主は自ら会社を経営せず、株主総会で取締役を選任し、取締役会に会社の経営を委ねる。ここで、取締役は「株主であることを前提としない」ということが株式会社制度の特徴である。つまり、株主は自らの代理人として第三者を選任し、経営を委ねることになっている。ここにコーポレート・ガバナンス問題の原点がある。つまり、株主は代理人をどのように監督-ガバナンス-し、代理人に株主の意向に沿った経営をさせるかという、エージェンシー問題である6

注6)資本主義を採るわが国は、民間企業の活動により、国民が必要とする財・サービスの生産・流通を行い、その過程において付加価値の生産=所得の創出することを、経済の原則としている。企業形態の中心として会社を制度化し、小規模な事業活動については持株会社として、合名会社、合資会社、合同会社を定め、大規模な事業を行う会社については株式会社を定めている。

エージェンシー問題の解決策として、現代採られている方法は次のガバナンス体制である。株主は、(a)株主に対して忠実で、他のステークホルダーからは独立な取締役を選任し、(b)取締役会は、取締役とは別人を執行役員(経営者)として選任し会社の経営を委ね、(c)独立取締役を中心とする取締役会は株主のガバナンスを代行し、執行役員の経営ぶりの監督に徹するというのが「現代の潮流」である。これを「出資者(株主)と業務執行者(経営者)の分離」あるいは「ガバナンスとマネジメントの分離」という。

3.2 わが国の資本主義観と株式会社観

会社法は会社の目的が営利であることを前提としているとするのが通説である。営利とは事業を行い、利益を上げてそれを出資者に分配することである。出資者にとっては、当然利益は多いほどよい。株主は、利益を求めて会社に出資を行うと考えるのが自然である。したがって、会社の目的は株主利益の追求であるべきである。ただし、(a)現代の社会はゴーイング・コンサーンを前提としており、かつ(b)株主総会で積極的に議決権行使を行うのは、年金、財団などの分散投資・長期保有を原則とする機関投資家であるので-わが国は先進国の中でも例外的であるが-、企業は長期的な利益を考えるべきであるとされている。このような市場観から、企業の目的は株主価値創造、株主価値最大化とされる。

それに対して、経営者の主たる目的は、現在の地位の安泰と安定的な報酬であると考えられる。しかし、株主価値を創造して行くためには、現代の厳しい競争環境の下では、経営者は絶えず新しい事業機会を開発し、その事業に投資を実行し、利益を実現して行かなければならない。従来の事業にこだわっていては、次々と現れる競争相手に利益を奪われてしまうからである。したがって新しい事業を開発する必要がある。新しい事業にはリスクをともなう。しかし、そのリスクを恐れていては利益を機会は巡ってこない。経営者は、自らの利益と株主の代理人として株主価値創造との間で板挟みになり、可能であるならば、敢えてリスクを取るような経営をしたがらないであろう。しかし、株主は、経営者に対して、リスクを取る経営を望むであろう。もちろん、ただリスクをとれば良いのではなく、株主が望むのはリターンに見合ったリスクでなければならない。かくして、明らかに、株主と経営者とでは利害が反する。経営者に対する何らかの仕組みが必要である。そこで、経営者の報酬を株主の利益と一致させるために、株主の利益と関係の深い業績指標と、経営者の報酬とをリンクさせるという業績連動報酬が多くの国で採用されている。これが、いわば現代企業のベスト・プラクティスである。

私見では、わが国には①企業の目的-営利-に関する社会的認知が株式会社制度とずれている、それに対応して②経営者に対する合理的な動機づけの仕組みがなく、経営の劣化を招いているという問題がある。

以下は、今世紀に入ってからの私の個人的体験、つまり①上場会社のコーポレート・ガバナンスに関する継続的調査7、②上場会社の取締役・監査役の経験、③ミシガン大学ロス・ビジネススクールGlobal MBAプログラムのFaculty Adviserの経験、等々に基づく「日本の経営とガバナンス」論である。ここで指摘するようなことが日本経営を駄目にしてきたのであり、この問題を解決することこそがアベノミクスの課題であると考える。「良質の経営を導く」のがコーポレート・ガバナンスの機能であり目的だからである。

  注7)http://www.cg-net.jp/jcgr/survey.html

3.3 日本社会の問題

 日本は資本主義国であるにもかかわらず、資本主義とはいかなる原理・原則に基づくものであるかが理解されていない。さらに、資本主義のもとにおける株式会社についても正しく理解されていない。上述のように、資本主義では、私有財産制度のもと原則として企業は出資者の私有財産であり、企業の所有者は出資者である。したがって、株式会社に対するガバナンスつまり支配権は株主が所有する。これが株主のガバナンスであるそれにもかかわらず、「会社は誰のものか」、「会社は従業員のものである」というような不毛な議論が依然として繰り返されている。

 企業の健全な事業活動によりすべてのステークホルダーが恩恵を受ける。ただし、企業がすべてのステークホルダーを尊重(respect)し、資本主義の大原則である市場原理に基づいた取引をおこなう限りである。その意味で企業はみんなの(ための)ものであるが、制度上は株主の私有財産-法律上でなく経済的事態として-であるから、株主が私有財産から最大限の利益を得ようとすることが許される。市場原理が遵守される限り、企業の利益追求が、結局は、すべてのステークホルダーつまり社会の利益に貢献するのである。わが国ではこのことが理解されず、企業が利益を追求することが、社会に広く受け入れられているとは言えない。サラリーマンの人たちも、自分の会社の利益が大事であることは身に染みて分かっているが、株主価値最大化ということには抵抗を感じる人が多い。これはもっともなことである。サラリーマンは、直接の責任としては自分の仕事を一生懸命やれば良いのであり、サラリーマン一人ひとりの仕事を企業の利益につなげるのは経営者の役割だからである。一方で、サラリーマンも公的年金である厚生年金や企業年金を通じて株主である。株主の利益にもう少し敏感になっても良いことも事実であると考える。

 株主利益の追求に一生懸命にならなければいけないのは、株主から会社を預かっている経営者である。そうは言っても、経営者自身も自分は株主の代理人であり、株主利益を追求するのが自分の唯一の使命であるとは考えたくないであろう。だからこそガバナンスが必要なのである。経営者の思いとは関係なく、株主利益を追求したくなるような仕組みが必要なのである。これが後述のガバナンス・システムによる経営者に対する動機づけである。

 多くの企業がウエブサイトで、経営者の「経営理念」や企業の「行動指針」を掲げ、企業は株主のためのみでなく、社会のために貢献することを謳っている。経営者が自らに対して、そして従業員に対して、自分たちは株主の奴隷ではないことを自らに納得させるためと理解できるのではないだろうか。

 最近は日本の経営者も「株主」、「株主利益」ということを、以前に比べれば頻繁に口にするようになったが、経営者から次のような言葉をよく聞く。「株主、株主というけれど、機関投資家には顔がない。そんな株主をなぜ大事にしなければならないのか?」「個人投資家には顔があるけれど、個人株主は買ったり売ったりで定まった顔がない」、こんな状況では株主を大事にできない。株主がそこに期待しているのは基本的には「利益の分配」、そしてそれにともなう「株価の値上がり」である。誰が株主であるか、どんな顔を持っているかは経営者には関係のないことなのである。経営者は株主価値の向上を心がけていれば良いのである。このことも日本の経営者にも一般の人にも理解できないことの一つのようである。

 長々と述べてきたが、ここで問題提起しておきたいことは、株主利益に対する社会的認知がないことから、わが国では経営者に対する業績連動報酬に対する理解がないのではないかということである。このことが、日本の企業経営を麻痺させているように実感するからである。

3.4 リスクをとれない経営

平成20年度年次経済財政報告(経済財政政策担当大臣報告)-リスクに立ち向かう日本経済-平成20年7月 内閣府も指摘するように、日本の企業はバブル崩壊以降リスクがとれなくなっている(8)

  注8)http://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je08/08b02010.html as of 2014/09/14

1980年代まで高度成長のもとで資金不足に悩んできた銀行も企業も、80年代の好況で豊富な内部資金に恵まれ、かつ成長率の低下に伴う資金需要の減少で資金過剰に悩まされた。銀行は貸出先の減少に悩まされたが、企業は資金調達に制約されずに設備投資等ができる自由度を獲得した。企業は、好調な株価を背景に時価発行による資金調達を積極的に行った。金融の国際化で海外からの社債調達ができるようになったことも大きな要因である。企業は高度成長のもとで常に資金調達難に悩まされ、銀行に頭を抑えつけられてきたが、むしろ銀行に対して優位をもてる企業が多数出てきた。多くの企業が銀行から解放されたのである。

持ち慣れないカネを持てるようになった企業は、投資の採算を度外視して投資を行った。企業が、投資利益率(ROI)が資本コストを超えた投資を行えば株主価値を創造するが、資本コストに達しなければ株主価値を破壊する。株式市場がそのことに気付くと株式市場は暴落する。それが1990年以降の株価下落であり、バブルの崩壊である。

1990年以降、多くの企業が不採算投資の処理に追われた。その結果、銀行は不良債権問題に悩まされ、銀行は機能しなくなり日本経済全体が麻痺した。その結果、1990年代以降は「失われた10年」とも「失われた20年」ともよばれている。この経験は日本企業に多くの負の遺産を強いたと思われるが、その最たるものは、「リスクをとれなくなった経営」の定着である。

不況の中で企業の利益つまり株主利益に対する社会の関心が高まったこともあり、経営者は事業の失敗による利益の減少というリスクを極度に恐れている。企業が営利を追求し株主価値を創造するためには、新規の投資をしなければならない。当然、投資には利益が伴うがリスクもともなう。合理的な判断によりリスクをとる勇気がなければ投資はできない。この臆病が日本企業を駄目にしてきたのではないだろうか。

将来に目を向けるならば、アベノミクスの成長戦略は、新規の成長分野を示し企業に新規投資を促す政策である。経営者がリスクを取ることに臆病であっては、アベノミクスの成功はおぼつかない。

3.5 インセンティブ報酬の欠如

 株式会社制度を採る国の多くでは、経営者報酬は固定報酬と業績連動報酬との組み合わせであり、かつ後者のウエートが大きいという報酬制度が採られている(*)。

(*) タワーズペリン編『「経営者報酬」の実務詳解』中央経済社 2008年3月

組織における人間行動の心理学的分析の第一人者として知られているビクター・ヴルームの「仕事とモチベーションに関する期待理論」によれば、人間が仕事をするときのモチベーションの強さは、①努力をすれば望ましい結果が得られるという期待、②その結果に対して報奨が与えられるであろうという期待および③報奨は自分にとって望ましいであろうという期待という三つの主観的期待の積として説明することができる。ここでは報奨とその主観的な価値が重要である。

 多くの国-とくにアメリカの-のビジネス界では、「優秀な経営者は業績連動報酬制度のもとで結果的に高い報酬を得る」、逆に「高い報酬を得る経営者は優秀な経営者である」という経営者観、価値観が定着している。もちろん、経営者にとっても報酬は高い方が良い。さらにこのような価値観の下では、高い報酬を得れば経営者としてのプライドも満足される。さらに、社会的貢献として報酬の一部を寄付すれば、人間としてさらに高い社会的評価を受ける。

 そこで、株主と経営者の利害の不一致を解消するために、①株主利益に連動する企業業績指標にリンクした業績連動報酬や②株主の利益を直接に表す株価と連動する、ストック・オプションなどの株式報酬が活用される。①であれば、業績目標を達成するか否かで、②のストック・オプションであれば株価が権利行使価格を超えるか否かで、経営者報酬は大きく異なることになる。目標管理と業績連動報酬が巧みに組み合わされているわけである。

 業績連動報酬の経営者は、ビジネス・リスクを負担し報酬が変動する。ハイリスク=ハイリターンということで、業績連動報酬のもとでは、経営者の報酬は高額になる傾向がある。しかし、業績を伸ばし株価を上昇させていくためには、企業は新規投資をしなければならないのでリスクにチャレンジせざるを得ない。したがって、業績連動報酬は経営者がリスクを取ることを促進する効果があり、株主価値創造に適しているが、他方で、経営者が「過度のリスク」-リターンに見合った以上のリスク-を取る方に走る傾向も無視できない。リターンに見合った以上のリスクということは採算が合わない-投資利益率は資本コストを下回る-投資ということであるから、株主価値を破壊することになる。そこで、最近のアメリカでは、過剰にリスクを取ることを抑制するために、経営者に年間報酬の数倍の金額におよぶ自社株保有を義務づける傾向が顕著になってきている。

 わが国でも、最近は役員に業績連動報酬やストック・オプションを付与するケースは多い。上場企業の過半がストック・オプションを採用していると思われるが、固定報酬部分に対する割合はきわめて小さい。経営者の報酬は、事実上、固定報酬であると言っても過言ではない。報酬のリスクが小さいので報酬額も低い。このような環境のもとでは経営者はリスクを取って最大限成長を追求するインセンティブは働かない。これが日本の経営者-とくにサラリーマン経営者(ファミリー企業などのオーナー経営者ではないという意味)-の伝統である。

 1980年代半ばまでの、投資機会は豊富にあるのに資金調達が困難であった時代は、このような報酬制度は何の問題も引き起こさなかったが、資金に比して投資機会が少ない状況では、投資に対するインセンティブが働かないということは、致命的な問題ではないだろうか。

 このことはまた、経営者の評価が報酬等による客観的基準に基づかないため、経営者の選抜基準が「利益を上げる経営能力」になっていないという重大な問題を引き起こすとともに、後任の指名が現社長の頭の中というブラックボックスで行われ、米国のように取締役会に対する透明性が確保されないと重要な問題につながっている。

3.6 経営者のリーダーシップ・パターン

 2001年以来私は、ミシガン大学ロス・ビジネススクールMBAの1クラスであるGlobal MBA Programのファカルティ・アドバイザーを務めており、毎年30人前後の日本人受験生の入試面接を行っている。原則として企業派遣生が対象のプログラムであるので、企業の大小はあるが、受験生は企業の在籍者である。ロス・ビジネススクールの教育理念の一つは企業リーダーの育成であるので、私には面接で受験生とリーダー観について議論をすることが要請されている。

 リーダーシップ論の世界では、リーダーシップには二つの基本要素があることが知られている。一つは業績志向型(P型;Performance type)でありもう一つは組織維持型(M型;Maintenance type)である。当然、経営者のリーダーシップには、当然これら二つの要素が必要であるが、安定した経営環境のもとではM型がより重要であり、変化の激しい環境の下では、将来を見通して企業を導いて行く必要があるので、P型のリーダーシップがより重要である。現代のように厳しい環境のもとでは当然、P型のリーダーシップが強く要請される(9)

        注9) http://www.ritsbagakkai.jp/pdf/414_03.pdf

 私が「あなたの身近にリーダーシップのある人がいますか」と質問すると、ほとんどの受験生が「います」と答え、重ねてP型かM型かをたずねると9割以上が「M型」と答える。さらに「あなたはどちらのタイプのリーダーを目指しますか」と質問すると、ほとんど全員が「M型」と答える。

 M型は、極論すればみんなが仲良くチームプレーできるような環境作りのリーダーである。現代の変革の時代を乗り切るために、まず必要とされるのは、長期的観点からこれから何をすべきかを示せことができるM型のリーダーシップなのである。つまり、戦略志向的なリーダーシップである。ところが日本ではこのタイプのリーダーシップが不足しているのである(10)

注10)製造業では、経営者に関して「プロダクト派」「プロセス派」という言葉がよく聞かれる。後者が、既存の製品に関して工程管理等の合理化・化以前などで利益を出してきた会社に貢献してきた経営者を言うのに対して、後者は新製品を生み出して会社の利益に貢献してきた経営者を言う。わが国の経営者の基本的なタイプはプロセス派であることは容易に想像が付く。リーダーシップの型とは直接結び付かないが、経営マインドとしては、プロダクト派がP型、プロセス派がM型に通ずるのではないかと感じている。

3.7 戦略的経営の欠如

 今や技術革新とグローバル競争とで経営環境の変動および競争が厳しくなっている。このような環境のもとで、企業が長期的観点から株主価値創造を続けて行くためには、経営者には①世界経済、自国経済および自産業の将来を見通し、②企業ドメインを確定したのち、③経営理念を確立し、④それをビジョン化するとともに⑤ビジョンを実現する戦略を立案することが不可欠である。しかるに、わが国企業のウエブサイトを見ても、明確・具体的な経営理念の説明は少なく、またビジョンも抽象的であることも多い。同様に、戦略を具体的・詳細に開示している企業も少ない。

 社外取締役の経験者に聞くと、取締役会で経営戦略が取り上げられ議論されることはほとんどないということである。私の経験でもほとんど記憶にない。取締役会は、原則として法律で決まった案件を取り上げるだけだからである。戦略の決定や見直しは、株主の利益に大きな影響を与える業務の意思決定に入るはずであるから、会社法の精神に則るならば、当然取締役の議題にされるべきである。困ったことに、会社法には経営戦略というような言葉はないので、通常は取締役会の議案項目に入っていない。したがって、取締役会の議事として上がって来ることはないのである。

 企業を訪ね、経営企画部等の経営戦略を担当するはずの部局の管理者にヒアリングしても、経営戦略を議論することはないという答がほとんどである。「戦略を立案しているが取締役会では議論しない」ということではなく、会社の中で戦略に関する検討自体がなされていないのではないだろうか(11)

注11)http://bizacademy.nikkei.co.jp/management/career/article.aspx?id=MMACz9000027122012

 戦略があるにしても次のような問題がある。メーカーの経営者の多くが、自社の技術力には大きな自信を持っている。1980年代に「ジャパン・アズ・ナンバーワン!」と讃え上げられたことが心地よく頭に残っているようである。しかし、その後の20年で製造業もすっかり変質している。多くの分野でITとの融合が進み、製品は見た目には似ているが、製品の本質はすっかり変質しており、似て非なるものになっている。もちろん日本の経営者もその変化を理解しており、一生懸命に対応しようとしている。しかし、その出発点は過去に成功をおさめた技術をベースにした製品である。ところが、たとえば韓国や中国の経営者は、既存の分野における日本の高い技術に追いつくには、莫大な資金と長い時間がかかることを理解しているので、これまで日本の企業が手を付けていない技術にもとづく新しい製品に、あるいは日本企業が手を付けられない(アフリカなどの)マーケットにターゲットを絞っている。日本企業が既存の技術に執着し短い将来しか見通せないのに対して、新興国はより遠い将来のマーケットを見て、新しいドメインを開発しようとしているのである。事業展開の視野に決定的な差があるように思われる。それがまさに戦略の不在となって現れているのではないだろうか。

 ミシガン大学ロス・ビジネススクールで勉強している日本人学生によると、最近はどの授業でも日本企業が教材として取り上げられることはほとんどないということである。日本企業について言及されるとすれば、「日本企業には戦略がない」という趣旨のコメントとのことである。1990年代始めまではミシガン大学に行くと、何かについて「日本はどうなっているのか」と聞かれて辟易としたが、最近は声を掛けられることがない。「洟もひっかけない」とはこういうことであろう。

3.8 経営者の年齢と任期

 全上場企業3,550社の現職社長の在任期間は平均7.1年であるが、6年未満が60%、10年以上が25%である。(12)。企業規模の小さいファミリー企業においては在任期間が概して長いことを考えると、大企業の平均在任期間は5年程度と推定して良いであろう。しかも、全般的には社長の在任期間は短くなる傾向にあるとのことである。アメリカのCEOも平均は7年強であるが、日本のように任期が半世紀近くに及ぶようなCEOは少ないと言われる(13)。加えて、日本の社長就任年齢の最頻値は59.8歳であるから、平均年齢はさらに高いことになる。他の同僚が定年を迎える頃、役員ということで定年が延長され社長に就任する。なお、アメリカのCEOの平均年齢は56.3歳である。

経済同友会の報告書『経営者のあるべき姿とは-確固たる倫理観に立脚したプロフェッショナリズムとリーダーシップ-』2007はトップの進退のあり方について次のように述べている。

  • 株主をはじめとした全てのステークホルダーの厳しい目に常に晒されながら企業価値を高める経営を行っていくためには、経営者はその任期の間は常に“全力投球”することが求められる
  • そのため、全力投球が可能な年数と到達するゴール地点(成果イメージ)を自ら設定して、自らに緊張感・アカンタビリティを課すとともに、自らの引き際も明確に描きながら経営に臨むべきであろう。

美辞麗句が並んでいるが、要するに、社長の職をいつまでも続けないで、後進のために潔く辞め、道を譲るべきだと言っているのではないだろうか。このような状況下では経営者はリスクを取ったり、長期的な視野の戦略的な投資をしたりすることなどできないであろう。

        注12) http://toyokeizai.net/articles/-/12186 http://yayoiplus.sblo.jp/article/94035930.html

  注13)  http://www.forbes.com/2010/04/26/executive-pay-ceo-leadership-compensation-best-boss-10-bosses_chart.html

前節で見たとおり、わが国の役員報酬は固定報酬中心であり経営者のリスク・テーキングに対する動機づけはきわめて弱い。これが経営者の戦略的発想を妨げていると思われるが、この任期の短さも、積極的な経営に対する動機づけを弱めていると思われる。しかも、わが国は減点主義であるから失敗は許されない。致命的な失敗をすれば屈辱的な辞任に追い込まれるかも知れない。経営者は短い任期をつつがなく全うするために、果敢にリスクを取って株主価値創造にチャレンジする経営からわが身を遠ざけているものと思われる。

3.9 経営者の近視眼

 1980年代、電気製品を中心にコスト・パフォーマンスの優れた日本企業の製品がアメリカ市場を席巻し、アメリカ企業は四苦八苦の苦境に陥っていた。日本企業が積極的に設備投資をしたのに対し、ROIにこだわるアメリカ企業は設備投資ができないでいた。日本企業の償却資産の平均寿命は4年程度であるのにアメリカ企業のそれは倍であると言われたものである。

アメリカでは1934年の証券法で四半期開示制度が導入された(14)。1980年代の日本は、ジャーナリズムも財界も学者も政治家もこぞって、アメリカは四半期開示があるために短期的利益に目を奪われ、企業が長期的な戦略的投資をできないのだと蔑んだ。私はその頃、東北大学に在籍していたが、経済学部のファイナンスの授業では「日本企業は確かに短期的な視野ではない。だからといって、合理的な長期的な判断に基づいて投資をしているわけではない。何も考えていないのだ」とコメントしていた。「内部留保の資本コストはゼロである」とか、「負債の資本コストは金利である」とかの日本企業の現実を考えれば、合理的な判断があったとは到底考えられないからである。右肩上がりの成長を続けていた日本経済においては、最近お中国企業がそうであったように、企業は何をやっても利益を上げられたのである。

        注14) https://www.sec.gov/about/forms/form10-q.pdf

このことは2008年から日本でも四半期開示制度が始まったことにより証明された。2008年前後は、私は数社の社外取締役および社外監査役を務めていたが、この制度が始まって以降、経営陣の最優先関心はこの四半期開示に移ったように見える。もともと戦略的思考が乏しいところに、四半期開示制度が導入されたので、経営陣の関心は一気に短期的利益に移行したように見える。日本の経営者も、同じ状況に置かれればアメリカの経営者と同じことをするのだというのが、私の率直な感想である。

3.10 科学的経営スキルの欠如

 バブル崩壊後も間もなくは、多くの企業が利益を上げたが、逆に国内市場の停滞あるいは縮小で資金の余剰に悩まされた。資金調達難であった過去を思えば贅沢な悩みであるが、何に投資をしようかという苦しみに悲鳴を上げた企業も少なくない。結局、このような企業の多くは、グローバリゼーションの波に乗り、企業買収などで海外展開に乗り出した。しかし、海外M&Aを展開した日本企業の多くは期待した成果を上げていないと言われる(15)。日本企業からの資金注入で息を吹き返し業績を向上させているものの、その成果は買収側の日本企業の業績に反映されないほどわずかなのである。

        注15) http://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/13e085.html

 買収した日本企業は、親会社のガバナンスあるいはマネジメントにより、シナジー効果を発揮し、親会社、被買収企業双方の業績を向上させるのが当初の目的だったはずである。しかし、それができていないのである。

私の経験では、海外子会社の視察に行くと、子会社のトップは現代経営理論のコンセプトやモデルで事業を説明する。Five forcesやvalue chainという言葉を用いてかれらの事業展開を説明する。しかし、日本の親会社の中では用語はほとんど聞かれない。これらの理論やモデルがどこまで有効かは別として、現代経営学の標準である、このようなコンセプト、モデル、理論により共通の言語ができ、ビジネス・コミュニケーションが可能になる。アメリカ企業では、このようモデル等はMBAプロトコルと呼ばれ、社内で議論や決定をするときには、「今日はこれこれのプロトコルで議論しよう」と決めてから、議論に入るそうである。逆に言えば、経営者たる者は、この種のプロトコルをマスターしておかなければならないとのことである。アメリカ企業での経験が長い友人の話では、最低で20ぐらいは要求されるとのことである。

このことから私が実感することは、日本企業には「経営の知」として最低限の経営スキルの蓄積がないということである。社外役員として会社に入って先ず驚くことは、各企業が外部者には理解できない社内用語でコミュニケーションを行っていることである。これはよく聞く話であるが、これでは経営学や他の企業での成果-ベスト・プラクティス-を賢く利用することができないのではないだろうか。

3.11 社外取締役の誤用

最近の日本では「コーポレート・ガバナンス改革といえば社外取締役の導入」との観があり、社外取締役を導入する企業は急増している。

ところで社外取締役の役割は、後述するように二つある。第一は「株主のガバナンス」を実効あるものにすることである。つまり、指名、報酬、監査の各委員会のメンバーになり、それぞれの監督機能を果たすことである。第二は、ガバナンスの観点からは副次的なもので、取締役会において社長を中心に進められる重要な意思決定が適切になされているかを監視することである。また、必要に応じてアドバイスをすることである。多くの場合それなりの経験や専門分野の人が社外取締役として招聘されているのであるから、その経験や専門を活用することは意味のあることである。しかし、ガバナンスという観点からはこれは社外取締役の副次的な利用法であるが、日本の企業では社外取締役の(ガバナンス)以外の意見をありがたがる傾向がある。外部者の専門的知識が必要であるならば、本来、コンサルタントなどを利用すべきである。それをたまたまある分野の人が社外取締役になっているからと言って、その人の意見などを尊重しすぎるのは誤りではないだろうか。

わが国では、社外取締役によりガバナンスの機能は果たされていないと言っても過言ではない。社外取締役が制度化されている委員会設置会社においてもそのようである。そもそも招聘する側の経営者自身が、社外取締役にガバナンスの役割を期待していない。また、社外取締役の二つの役割を正しく理解している社外取締役は少なく、また仮に理解しているにしても、社長の意図をおもんばかり、ガバナンスの改革を進言することはほとんどないからである。結果として、社外取締役の制度はガバナンスの観点からみると正しくは運用されていないのである。これはコーポレート・ガバナンスや取締役会のガバナンスが社会的に理解されたり認知されたりしていないからだと推測する。

3.12 まとめ

私が気付いてきた日本企業の特徴について私見を述べてきた。これらは相互に関係があり、総合としてリスクをとれない日本経営を実現している。

もちろん、企業によってはエクセレント・マネジメントが見られるが、日本全体としては経営力は脆弱、貧弱であると言わざるをえない。最近のMBA留学希望者には理工系、技術系のプロフェッショナルが多い。私がミシガン大学のMBA入試面接で見た限りでは、かれらが留学を希望する理由を大胆に要約すると次のようになる。「私たち技術者が優れた技術や製品を開発しているのに、わが社の経営者は経営力がないので利益に結びつけてくれない。かくなる上は、私たち技術者が経営の科学を勉強して会社を経営するしかない。」

「株主のガバナンス」および「ガバナンスとマネジメント分離」のもとで、株主にとって最善の経営-マネジメント-を引き出すのがコーポレート・ガバナンスの役割である。本節の冒頭でも若干触れたが、あらためてコーポレート・ガバナンスとは何かについて整理しておこう。

4.コーポレート・ガバナンス

4.1 コーポレート・ガバナンスとは

 コーポレート・ガバナンスの目的は、経営者から良質の経営を引き出すことである(*)。その仕組みが取締役会を中心とするガバナンス・システムである。現在の日本においては、日本の経営者に企業家精神を発揮してもらい、リスクにチャレンジしてもらうことが不可欠である。経営者が、資本主義の仕組みと株式会社制度を理解し、高邁な精神を持って積極的な経営をしてくれるならばそれに越したことはないが、経営者の個人的資質に依存するこのようなやり方は不安定である。それよりも経営者が自発的にリスクにチャレンジせざるを得ないような状況を仕組みとして作ることのほうが望ましい。

4.2 現代のコーポレート・ガバナンス-取締役会のガバナンス-

 現代のコーポレート・ガバナンスの世界的な潮流は、独立取締役としての社外取締役中心の取締役会構成と、社外取締役で構成される指名委員会、報酬委員会、監査委員会と通しての取締役会に執行役員に対する監督強化である。会社法上の取締役会の役割は、①(株主の利益にかかわる)重要な問題に関する意思決定(業務の決定)と、②業務を実行に移す執行役員(監査役会設置会社の代表取締役・業務執行取締役、委員会設置会社の代表執行役・執行役)を選び、③業務執行つまり経営を執行役員に委ねるとともに、④経営が適切に行われるように、執行役員およびその経営を監督することである。この監督が取締役会のガバナンスであり、その本質は株主のガバナンスの代行である。以下は、ニューヨーク証券取引所の上場規則に盛り込まれているアメリカ企業のベスト・プラクティスである。

4.2.1 指名委員会

 グローバリゼーションと急速な技術革新のもとで企業は厳しい競争環境に身を置いている。このような大競争に打ち勝ち企業が、会社法が定める営利を追求するためには優秀な経営者(上記のCEOで代表させる)が不可欠である。そのCEOを決めるのが社外取締役を中心とする取締役会である。そのためには、社外取締役自身が独立かつ適正な判断の力を有している必要がある。株主総会に諮るべく、社外取締役を中心とする取締役候補者のリストを決めるのが指名委員会の使命である。社外取締役を中心とする取締役会がCEOを選任するが、社外取締役が社内の人材すべてを評価できるわけではないので、執行役員自身が後継者育成計画-CEO Succession Planning-を実行し、次世代のCEO候補を生み出して行く必要がある。取締役会がCEOを選任する際にはそこまで配慮する必要がある。

4.2.2 報酬委員会

 優秀なCEOが選任されても、営利に向けて動機付けられていなければ、株主にとって意味がない。CEOに対する動機づけのインセンティブになるのは何であろうか。人によってインセンティブは異なるであろうが、共通のものは報酬である。欧米では業績連動報酬による動機づけが一般的である。とくにアメリカでは、高額の報酬を得る経営者が優秀な経営者であるとの共通認識が強いので、業績連動報酬がインセンティブ報酬として広く利用されている。

わが国では、そのような認識は必ずしも一般的ではないので、業績連動報酬が歓迎されていないが、それに代わるインセンティブ制度を見つけられない限り、インセンティブ報酬制度の普及を進めるべきであろう。報酬委員会の使命は、CEOを有効なインセンティブ報酬制度のもとに置くことである。

4.2.3 監査委員会

監査委員会の使命は、第一に①CEOが株主に対して行う会計報告の適正性を判断する外部監査人-公認会計士-の独立性を判断することである。②CEOは営利という自らの責任を全うするために、事業運営の効率性とコンプライアンスを確保すべく内部統制システムを構築し運営しているが、それが適切に機能しているかを検証するために内部監査人を指名している。監査委員会のもう一つの役割は、内部監査人の独立性を判断することである。内部監査人は役職上CEOの部下であるが、CEOに対しても独立性が要求されている。その意味では内部監査人は非常に難しい立場にあるので、その独立性を監査委員会が判断するのである。

なお、監査委員会は、外部監査人による会計監査と連携して、CEOによる株主への事業報告の適正性も判断する。

4.2.4 独立取締役の意義

三つの委員会は、このようにCEOに対して厳しく当たらなければならない。だからこそ、取締役には独立性が不可欠なのである。社内出身の取締役は広い意味でCEOと同僚であるから、CEOに対して独立性を確保することは難しい。そこで社外取締役が選ばれることになるのであるが、その本質は独立取締役でなければならないのである。

<取締役会のガバナンスのベスト・プラクティス>

1.    ガバナンスとマネジメントの分離

2.    取締役会は独立取締役としての社外取締役を中心に構成

①    執行役員を選任する(執行役員≠取締役)

②    取締役会は業務に関する意思決定を行い、その執行は執行役員に委ねるとともに、株主の観点から最適な経営がなされるように監督する

 ⇨ 監督 = ガバナンス

3.    監督の機能

n  独立取締役から構成される三つの委員会が中心

p  指名委員会・報酬委員会・監査委員会

4.2.5 わが国のコーポレート・ガバナンス改革の現状

わが国でもガバナンス改革を目的として、2003年4月施行の商法改正および2006年8月の会社法により、委員会設置会社の名の下にこの仕組みの導入を図った。委員会設置会社とは、指名委員会、報酬委員会、監査委員会の三委員会をもつ取締役会を有する会社をいう。政府は、当初、伝統的な監査役会社を廃止して、委員会設置会社に一本化する意図であったが、経団連等が、社外取締役を義務化する委員会設置会社に猛反発したため、伝統的な監査役会設置会社との選択制ということになった。

監査役会設置会社の監督機能が形骸化しているがゆえに、委員会設置会社が導入されたにもかかわらず、財界の反対により監査役会設置会社を廃止できなかったのである。その結果、ほとんど会社が監査役会設置会社に留まっており、委員会設置会社はほとんど利用されておらず、ガバナンス改革は実効を上げていない。しかも、独立取締役の概念も財界の反対で会社法に盛り込めないでいる。また、報酬委員会には、インセンティブの概念が不在である。さらに、監査委員会には、とくに内部監査人の独立性の概念がない。つまり、形はあっても本来の精神が宿っていないのである。まさに「仏作って魂入れず」である。

5.アベノミクスとコーポレート・ガバナンス改革

-日本企業はなぜ駄目になったか?-

今こそ、経営者に企業家精神の発揮を促す真のガバナンス改革を導入し、グローバル競争のもとで企業成長と収益拡大を確実に実行できる経営の実現を目指さなければならない。ガバナンス改革こそ、アベノミクス成功のコーナーストーンである。しかるに、2014年6月の会社法改正では、監査等委員会設置会社という委員会設置会社と監査役会設置会社の中間のような取締役会形態を導入した。このように、形だけ揃えても内実が伴わなければ意味がないのである。

他方、安倍総理は、金融庁と東京所見取引所にコーポレート・ガバナンス・コードの作成を指示した。これはいわばコーポレート・ガバナンス原則であるが、ここで世界の潮流に乗ったガバナンス・システムが提案されるかが、アベノミクスの成長戦略成功の鍵を握ることになるであろう。

 アベノミクスが解決すべき課題は、逆に、「日本企業はなぜ駄目になったのか」という疑問に対して答えを与えてくれる。

明治維新後、わが国経済は一心に欧米へのキャッチアップに努めてきた。わが国のHRは良質であり、かつ江戸時代に多くの技術を蓄積していたこともあり、日本は順調に経済の近代化を推進した。ただし、それは技術的な面だけであり、経済思想においては真の資本主義革命になっていなかった。

 第二次大戦で日本は壊滅的な打撃を受けたが優れたHRと技術力により再生を遂げた。しかし、日本が世界の最先端レベルに到達した1980年代、世界はグローバリゼーションというパラダイム・シフトを果たした。そこで日本はグローバル競争という、資本主義の真の荒波に揉まれることになった。資本主義的な経営手法を確立していない日本は、あえなく世界の最前線から後退しつつあるのである。現在の日本に必要なのは真の資本主義革命である。そして、この環境に適したマネジメント能力を確立することである。そのためには、同時にコーポレート・ガバナンス改革が不可欠である。

<わが国の過去のコーポレート・ガバナンス改革の問題点>

1.    そもそも株主のガバナンスが理解されていない

 ・  資本主義・株式会社制度に対する独自の理解

2.    伝統的に取締役会の監督機能が形骸化

3.    その反省として2003年4月に委員会(等)設置会社を導入

 ・  指名・報酬・監査という取締役会の監督機能を明確化

 ・  実際には、次のような致命的な欠陥があるためガバナンスは機能していない

①    独立取締役概念の欠如

②    インセンティブ報酬概念の欠如

③    内部監査の独立性概念の欠如

 

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